「―――…エン、もう少し下降しろ」
吹き渡る風の中、ウルガの小さな囁きに、エンは奇声をあげる。
メラメラと燃えていた翼の炎が、本の少しだけ小さくなる。
…同時に、エンの飛行速度と高さが徐々に落ちた。
ウルガの目下に、点の様に小さな人間の群があった。
…群と言っても、その人数はごく僅か。
遠路はるばるから列を崩さずに徒歩でやって来た十数人の行列。
こんなに暑い、果てしない砂漠の真ん中を、少しも歩が乱れることも無く、先頭の城への案内役について真直ぐに進む集団。
………とても、砂漠に不慣れな人間の体力、足取りとは思えない。
ギラギラとした陽光の下で………よく倒れないものだ。………たかが使者だが………一体、どんな奴等なのか。
「…………国交など。……………平和ボケした国が…何の用だか……」
この希に見る、歴史に刻まれるであろう事態。
フェンネルから使者をよこす主な目的は国交には違いないだろうが………。
(………それだけでは…無かろう)
………何か他に、別件がある筈だ。
書状の内容からしか判断出来ないが…。
………緑の国は、やけに小賢しい小娘が王を名乗っている様だ。
ウルガは更に下降し、隣国からの使者の行列の遥か頭上を旋回した。
少人数の使者達は、ただ前を見据えて黙々と歩くのみだ。
………案内役が違う場所に導いているとか、騙されているとか………少しも警戒していないのだろうか?
ただ大人しくついていっているが……。


