亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「…あっれぇ―?……インテリなリスト様は気付いてもいなかったんですか―?これだからインテリは。………か弱い乙女にその剣で何する気よ。引っ込めてよ。……………まぁその…嫌な感じの空気だけど………………こうピリピリとした……」


イブは頬杖を突き、窓を叩く吹雪に目をやってニヤリと口元を歪ませた。







「………殺気ね、あれは。……………虫みたいにわらわらと巣穴から這い出て来てるわよ。………バリアンからね」

「………バリアンからだと…?………………どれ位だ?」


なるべく周りに聞こえない様に、声を抑えて話出した。



「うーん…はっきりとは分かんないけどさ。………日に日に増えてる。………静かに動いてるわよ―………百…二百そこらが…この雪国全体に分散し始めてる………」




………いつの間にそんな数が。


………しかし何故、バリアンは急にそんな数の人間を送って来たのだろうか。
送ったのは商人か…スパイか………それとも…………………………………兵士、か。





「………どういう目的でこの国に潜入しているのか知らないが………殺気に満ちているとなると………………少なくとも、こちらと同じ王族の捜索だとか…………穏やかなものじゃないだろうな………」


フェンネルとの国交があったのもつい最近だ。………バリアンは…何をするつもりなのだろうか。




「…よぉ―し。バリアンが何考えてるかはあたしが調べてあげる―。……とにかく、隊長と合流は危険よ。そんな物騒な連中が溢れてきてる中では、少人数の方が何かと良い。しばらくはこそこそと連絡取り合って……機会を狙って合流ね!………それまではジンが隊長独り占めか―…ムカつく―」