禁断の地に行けば神の怒りを買う………。
それは亡國と化したこの国の象徴が、過去のバリアンによる激しい戦火に壊され、主人も誰もいない孤城が忌み嫌われて……『禁断の地』とされたのだと思うが………。
………怒り狂った神が眠る、とは……どういう意味なのだろうか。
………本当に、何の比喩なのか。
これについては散々調べたが、民は皆、詳細については知らない様だった。
「………何でもなければ…いいんだがな」
「気にする事無いでしょ。行けば分かるって~」
気にかけるリストに対して、その問題を全く相手にしていないイブは、欠伸を噛み殺した。
……リストはしばらく無言だったが、結局何も答えは出ず、その場でグッと身体を伸ばした。
「………何も情報が無い。………話を移そうか。………多分、陛下はそろそろデイファレトに入られる筈だ。………合流地点は神声塔…だったが………それは止めて、一時合流は避けようと思う…」
ようやく念願の陛下と再会出来る、と泣いて喜んでいたイブにこれはきつかったか…と思いながらリストは様子を窺うと………。
………予想外にも、イブは何ら抗議も何もせず、ふーん…とか呟きながら髪をいじっていた。
「……珍しいな………反対じゃないのか?」
怪訝な表情を浮かべるリストを、イブは一瞥した。
「………何よその顔……そりゃあ死ぬ程、隊長に会いたいけど…さ………合流はまだ控えるべきね~。………………ここ二、三日………何か良くない空気が紛れてるもん………」
「………良くない空気…?」
いまいち理解出来ていないリストに、イブはニヤニヤとほくそ笑んだ。


