亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

イブは渋々身体を起こし、しかしだらしなくなくテーブルに顎を置いて、広げられた地図を睨み付けた。



「………良いなぁ…良いなぁ、ジンは…。………今度会ったら追いかけ回してやる…」

「………………ま、はっきり言って俺はジンと組まなくて良かったな。……………あの野郎、なんか絶対俺を嫌ってる…」

「……………あんた毎回睨まれてるよね。いい気味―。………何かしたんじゃないの―?」


プププ…と含み笑いをするイブを無視し、リストは話を戻した。
キリッと真剣な面持ちに切り換える。



「………神声塔での御告げの内容……覚えているな…?」

「…まぁね」

「………御告げの通り、ここデイファレトの王族が動いているとなると………………彼等の行き先、目指す最終地点は必然的に…ここだ…」

ビシッと指先で指示した部分に、小さな皺が寄った。






「―――………城。………俺達が集めた情報によれば、この辺りは、他と違って極寒中の極寒。氷点下もいい所の土地だとか…」

「火が凍る場所なんでしょ………そんな所に行くなんて自殺行為じゃん…」



デイファレトの地形…この世界の地形から見ても、城のある場所は北の大陸の中の北。

真北に位置する。

永遠の冬季が始まる前の遥か昔は、デイファレトは雪国ではあったものの、ちゃんと春や夏も季節があった。

………冬季が続く今は、あの土地は冷やされてばかり。





「………王政が崩壊してから数十年。………この城がある辺りには、誰も近寄ろうとはしないらしい………そういう場所を、狩人は聖地と呼ぶらしいが………ここはその逆だ」



古い地図には、『城』、とは書かれていなかった。