そういう用件で今、不仲な二人はこうやってデイファレトにいる。
各大国の三つの大陸が、互いに手を繋いで輪になっている様なこの世界。
デイファレトへの潜入経路は、バリアンからとフェンネルから…両方から行ける。
フェンネルからも行けるには行けるのだが、国境を守るバリアンの厳重な警戒が如何ほどか見極めるため、二人はあえてバリアンを横断してデイファレトに入った。
…デイファレトにしか生息していない獣を密猟するたくさんの悪そうな商人に混じると、存外楽に潜入出来た。
足を踏み入れると、肌をビシビシと刺す極寒の風と凍て付く空気、純白の雪が直ぐに襲ってきた。
………砂漠の国のすぐ隣りなのに……互いの気候は全く干渉し合っていないらしい。
………閉ざされた空間が並んでいる状態なのだ。
「……こっちに潜入して約二週間。そして俺達の現在地は………ここだ」
クシャクシャになっている、黄ばんだデイファレトの古い地図。
横になった葉っぱの形の国。
そのちょうど真ん中から下方の位置を、リストの長い指が差した。
「ここから少し北へ行けば『神声塔』、その直線上の…更に北へ真直ぐ行けば………デイファレトの城がある。………おい、聞いてるのか…?」
未だ俯せになってブツブツ独り言を連呼しながら、テーブルに指先で“隊長”と書いているイブ。
リストの話を聞いているのかいないのか。その前に任務を忘れてやいやしないか。
「………いつまで不貞腐れてるんだ。ここまで来たらやり通すしかないだろう…。…………陛下も後日、この国に入られるんだ。………俺らが充分下調べをしないでどうするんだ…」


