亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

そうだ。あいつが、ダリルがいるではないか。

あのダリルなら戦闘能力も高いし、頭も良すぎる。
今は執務官なんぞという恐ろしく大人しい業務に専念しているが。



「ダリルは駄目だ。毎日どれ程の量の執務をあいつが殆ど一人でこなしていると思っているんだ。…涼しい顔で。あれ一人いないだけで、大臣等は毎日泣いてしまう。……それに、本人曰く……出世コースを進みたいから、これからはデスクワークに絞る…だとさ」


((………))


…ダリル……奴は着々と財と名誉を築いていっている。

何て奴だ。






二人揃って呆れていると、ハッとした様にイブが挙手した。

「はいはーい!!………じゃ、じゃあジンは?ダリルが駄目ならあいつだ!!隊長!!ジンは駄目なの!?」


ジンなら……ジンなら適役だ。

彼はまだ若いが、国家騎士団総団長に抜擢される程の実力の持ち主。
………総団長が不在というのはまずい気もするが、彼はいつも神出鬼没で、はっきり言って総団長の役割を果たしていない…気がしない訳でも、ない。

世話焼きのアレクセイに毎日毎日説教を受けていて、うんざりしている。ならばそれから救ってやろうではないか。



唯一の期待であるジンを、自信満々に推薦したイブだったが、ローアンは無表情で「却下」、と撥ね除けた。



「ジンはもう決まっている。お前達二人を送り込んだ後、私自身も隠れてデイファレトに赴く。ジンはその際の、私の護衛にするつもりだ」






「―――……ええええっ!?」

ちょっと間があって、イブは半泣きで叫んだ。

その滲む涙は、悔しさか…はたまた大好きなローアンを護衛するジンへの嫉妬か。