亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



せつかくの綺麗な顔を仏頂面で固めたリストも、背筋を伸ばしてビシッと佇みながら、横目でイブを睨む。




…耐え兼ねたイブはその場で地団駄を踏み、目茶苦茶に喚きだした。

「…嫌!嫌!!嫌だあぁぁ―!!隊長!!あたし、その手の冗談は嫌い!!こいつ嫌い!!何で!?何でこいつとあたしなの!?うっわ…吐きそう!!」

「どさくさに紛れて足を踏むな!!」

ガスガスと、床とリストのブーツを交互に踏みながら頭を抱えてグネグネと身体を捻るイブ。


ローアンは頬杖を突いて、何だか冷めた目でその光景を眺める。

「…仕方無いだろう。我が国は温暖な気候…。……寒さに慣れていない我等があの極寒の地に入るには、色々と準備がいる。………お前達二人は体温調節が可能だし、どの気候にも容易く順応出来る。………イブ嫌がるな………ある意味お前は最強なんだぞ?」

「最強でも最低でも、こいつとペアは最悪!!最っ悪!!あたし嫌だ!!こいつだけ行かせてよ!!」

独り喚き続け、悶えるイブは、本気で嫌な様だった。

黙って聞いていたリストのこめかみに、次第に青筋が浮かぶ。

「イブ、お前は絶対だ。あそこはたくさんの神を崇める狩人の地。………何がいけなくて、何処まで許されるのか、全く分からない。…へまをして襲いかかられても、対抗出来そうなのがお前だ。………その暴れ馬のお前を制御し、この極秘計画を上手く遂行するために、リストがつく」

「………ハハハ………………こいつのお守りですか」


ボソリと苛立った低い声で呟いたリスト。



「あたしがクルクルパーなのは認める!!でもクルクルパーだからこそあたしは行かないべきだよ!!他のインテリを代わりに!!ダリルは?」