「こんなリスト野郎で悪かったな。……前から言おうと思っていたんだが、お前……いい加減陛下を隊長呼ばわりするのは止めろ。そして陛下離れしろ…」
「隊長は隊長なの!!あたしの隊長は隊長しかいないんだから!!」
「訳が分からん…」
―――…一見、成人女性に見えるイブこと、イブ=アベレットは、事実13歳の子供だ。
フェンネルの歴史ではまだ新しい二年前の『六年戦争』では、11歳という若さでイブは、ローアンと同じ反国家組織側に属し、一兵士として戦争に加わっていた。
その頃は年相応の可愛らしい少女の容姿だったのだが……この二年で、成長期にしては成長し過ぎた姿となっていた。しかし、精神年齢の方は年相応…もしくはそれ以下だ。
その向かいで独り黙々と地図を睨み付ける青年は、リストこと、リスト=サベス。
15歳にしては背も高く、大人びた容姿だ。
彼も『六年戦争』において、ローアンの反国家組織側と対立していた国家騎士団の幹部に属していた。
その当時から、イブとははっきり言って不仲だ。
全くと言って言い程関連性は少ない二人だが………ある一点だけ、共通するものがある。
それは、この二人………普通の人間ではないという点だ。
実はイブ、魔術を扱う獰猛な獣の『フェーラ』である。
知能は低いものの、戦闘能力は極めて高く、危険な獣だ。
だが、人間に育てられたイブは、どちらかと言えば人間に近く、人の姿でいる方が落ち着く程だ。
リストはそのフェーラと人間のハーフ。
その異なる血によって戦闘能力はずば抜けているが、本人はフェーラが嫌いだ。


