亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



歴代のフェンネル王の全盛期を凌ぐ勢いで、僅か………たったの二年で、あの国は輝きを取り戻したのだ。


………新しく玉座についたフェンネル王54世は、天性の王だったのだろう。



………そんな若輩が………それだけでも腹が立つというのに………!


「………新しい王は………まだ子供で……………しかも女王であるそうではないか…!!」

「…ええ。18になられた若々しい女王陛下だとか。見目麗しい、非常にお美しい方だそうですよ。………………見た目での支持率を考えますと、我が国はぼろ負けですねぇ!」

「うるっさいわ!」


老王は腰からフック型の剣を抜き、この道化同然の側近に向かって目茶苦茶に振り回す。

ケインツェルはヒラリヒラリと軽快なステップで避け、「暴力は反対ですよ。私は自分の手を汚すのは嫌いな平和主義者ですから!アッハッハッハッハ!」と、最後まで苛立つ台詞を吐きながら、玉座の階段を降りて行った。

謁見の間の開け放たれた扉へと向かいながら、ケインツェルは玉座に座って地団駄を踏んでいる老王に視線を移す。


「―――そのユニークな使者とやらですが、正午辺りにこちらに着く予定ですが…?………………如何致します…?………一応、ここは礼儀として入城を許しますが………後は王の判断にお任せ致しますね。……賢明、且つ貴方様らしい指示をこのケインツェル、お待ちしております!では失礼、王よ!優秀な兵士の君達!!アッハッハッハッ!!」



謁見の間にズラリと並ぶ、槍を持ったまま微動だにしない兵士達の何人かの肩を無遠慮に叩き、ケインツェルは至極ご機嫌な様子で部屋を後にした。




………………甲高い嵐が去って行った。