…とか言ってみた商人はその途端、一瞬の浮遊感と息苦しさを同時に感じた。
………商人の目に、悪魔が見えた。
―――…物凄い険悪な表情で、リストが商人の胸倉を掴み、高々と上げていた。
紫の瞳は猛獣の如く、爛々と光っている。
「―――……誰と………誰が………………………恋仲だって……?…あ?…ああ?…………おい…貴様!!もう一回馬鹿言ってみろ!!その口で言ってみろ!!誰と誰がどんな仲だって!?ああ!?」
静かに動かなけりゃならないんだぞ、とか数秒前に言った張本人が今、不覚にも一番目立つ事をやらかしていた。
もう、震えるしかない商人は顔面蒼白で口を開ける。
「……………だから………………………………あ、あんたらが…………………恋な…」
「まだ言うかぁ!!この口は!!右と左に順番に裂いてやる!!」
「やだっ!ダーリン、暴力は止めて!!イブ、恥ずかしがるダーリンが好きよ!」
「悪乗りするんじゃねぇ!!」
恐怖でショック死しかけた商人は別の家屋に運ばれ、迅速な治療により、息を吹き返した。
まるで何事も無かったかの様に、イブとリストは向かい合わせで腰掛けていた。
イブはテーブルに俯せになり、握り拳でドンドンと叩き続ける。
「……………………隊長………どうしてあたしをこんなリスト野郎と組ませたの…………………護衛になんであたしを選んでくれなかったの…………………………………………………ああ、隊長の匂いが何処にも無い…………寂しい…寂しい…」


