くぐもった独り言は、何だか泣いている様にも聞こえる。
「………………………………悲しい………………………寂しい…………はぁ……………………………何で………………何で………あたしじゃないの………………選んでくれないの………」
………。
………聞いている方まで何だか暗くなる女の呟き声。
………何があったのだろうか。男絡みか…。
よく分からなかったが………男はとりあえず声を掛けることにした。
女の背後に近付き、その細い肩を軽く叩いた。
「……よお、別嬪さん。何があったのか知らないが、あっちで一緒に飲まないか?一杯くらい奢ってやるよ」
明るい調子で言った直後、テーブルを叩いていた彼女の拳が動きを止めた。
そしてゆっくりと振り返った、その暗い影を落とした顔は……………………確かに、別嬪だった。
よく見ると色白だ。輪郭も細いし、端整な面立ちである。
………女はぼんやりと男を見詰め……やや顔をしかめた。
「…………何これ。これナンパ?……口説いてんのお兄さん?」
男に身体ごと向き直り、興味深げに眺めだした。
「お兄さん?…てことはあんた、まだ若いんだな。幾つだい?もうすぐ20ってところかい?」
どんどん親しげに話し掛けると……女は急にコロッと態度を変え、しかめっ面から綺麗な笑みに早変わりした。
「…え―?女性に歳を訊くなんて、野暮なお兄さ―ん!幾つに見える―?超若くない?ピチピチじゃない?」
さっきの鬱状態は何処へやら。
女は男のナンパに乗り出した。
「じゃあ特別に教えてあげる―。ついこの間、18になりました―!」
首を傾げて可愛らしく言った…直後。


