「………………おい…………女じゃねぇか……?」
「………だな。……………珍しいな…」
長い黒のマントで覆われているものの、その身体付きは確かに女特有のものだった。
………見た目、10代後半位だろうか。……成人であることは間違いないだろう。
女性が飲み屋なんかにいるのは極めて珍しいことだ。だが……まず何よりも先に思ったのが……。
「……………良い女だな。………出てる所は出て、引っ込んでる所は引っ込んでるぜ…」
「………細い身体だな…」
見るからに、良い女。
顔は分からないが、身体の方は女性なら誰でも羨む様なプロポーションだ。
………暗がりでテーブルを叩き続けるという奇怪な行動が無ければ、完璧なのだが。
「………ちょっくら、声掛けてみようかな」
男は好奇心から、酒を置いて腰を上げた。
「……止めときな。さっき見たんだが………男連れだったぜ。………男の方は今何処かに行っちまってるがよ………」
苦笑しながら一応忠告されたが、この仲間も案外乗り気の様だった。
「…なーに。俺の女だ―、とかで殴られる前に、帰ってくるさ…」
そう言うなり、ちょっとふらつきながら、男は女の元へ歩み寄った。
………暗がりでやっぱり、無心にテーブルを叩き続ける女。
近くまで来て分かったが………この女……ブツブツと独り言を言っている。
だらしなくテーブルに身を投げる女のマントからは、豊かな長い髪がサラサラと揺れていた。
「………………何で…………どうして……………………………………寂しい………………………寂しいよ……………」


