―――闇の中。
風に乗ってちらつく闇に染まった細雪は、窓の厚い硝子に、飽きる事無く身を投げて張り付いていく。
中に入ろうとする様に、吹雪きの手足ががガタガタと窓を叩いた。
吹雪いてきた雪は、どんどん積もる。
何かを作る様に、後先考えず、気ままに積もりに積もっていく。
見ているだけで寒い、極寒の夜景が、暖炉の側の窓から覗いていた。
酒を片手に商売話で盛り上がる、とある街の中の、小さな飲み屋。
その来客の殆どが、商人。
ちょっとつまめる様な安い料理と、アルコール度数の高い酒が一杯。
小さな四角いテーブルで向かい合ってブツブツと話すのは、やはり商談。
最近の売り上げや、物資の交渉……依頼を受けた狩人の悪口など、様々だ。
酒が入ってくると、酔った商人は暴れたり、ちょっとした殴り合いをしたり………飲み屋は何処もそんな光景が広がっている。
「………あそこの隅にいる奴、見てみろよ。………………マントでしっかり肌を隠しているが……指が赤褐色だった。………密輸王国、バリアンの商人だぜ…」
ほろ酔い気分の若い商人の男が、問題の人間に指をさして仲間に囁いた。
「………バリアンねぇ…。………最近では、あちらの商人も珍しくなくなったな……。月に一度は見る様になった………」
「……ったく…………不法侵入もいいとこだ。……密輸現場を狩人にでも見られちまえば良いんだ…」
「……………近頃は、その狩人も……まともな奴は少ない。…………先人の教えを受け継ぐ良い狩人が………減ってきている気がするよ……」


