その稀に見ない国交で……バリアン王にとっては悪夢でしかない事が勃発したに違いない。
………そしてそれは…一刻を争う。
「………………お前らが慌てふためく様を見るのは、愉快だわ。…………敵であるあたしらの力まで借りたいなんて………異常ね。………そこに付け込めば………内紛なんてあっという間に終わりそう…」
微笑を浮かべてそんな事を呟いたドールに、兵士達は無言で殺意を露わにした。
「………ふむ……賊側の貴女から見れば……思ってもみなかったチャンス。これを機に…一気にこの城を攻め落とす………と、お考えになるのは当然なのですが……………とても……とっても残念な事に…………………貴方方が条件を呑んでくれなければ、我等にも、貴方方にも………事態は良い方に転がってはくれない様なのです」
「………何ですって?」
どういう意味?、と顔をしかめた途端、ケインツェルはニヤリとまた笑った。
その反応を待っていました、とでも言うかの様に………この男は勿体振る。
「―――………ああ…………聞いて頂けますか?…………ドール嬢。………………………………この国自体が無くなってしまうかもしれない……実に切羽詰まったお話を…」


