大袈裟に溜め息を吐き、役者の様に熱を込めて喋りながら両手を掲げたり肩を抱えたりするケインツェル。
銀縁眼鏡が妖しく煌めいた。
「………おかしな趣向だこと」
「フフフフ!!…身に余る褒め言葉ですよドール嬢!!貴方方、善良な民のためにも…………そして私の楽しみのためにも………是非、呑んで頂きたいですねえ………」
両手を合わせてクネクネと長身の身体を曲げながら、ドールの答えを待った。
……この男……気持ち悪過ぎる。そして見ているだけで…不快だ。
(………話が……旨過ぎるわ…)
…確かに。
その条件次第で叶う内容は、願ってもみない………いや、想定していた範囲内の理想よりも、遥かに理想的だ。
だが………卑劣なこいつらの事だ。
そんな約束……直ぐに破るだろう。
「………おやおや……探る様な目付きですねドール嬢。実に可愛らしい。………フフフ、怒らないで下さい。照れですか?フフフフフ!!………………実は………こちらは、貴方方の手を借りなければいけない程……切羽詰まった事態でしてねえ…」
「…………その事態にあたしらを巻き込むのが………お前らの条件?」
………なるほど。
どうも近頃、国側の様子がおかしかった訳だ。
兵士の厳重体制はやけに厳しくなっているし……監視のサラマンダーが日夜よく上空を往復していた。
しかしそれらは賊への警戒とは違う様で………また別の何かの様だった。
偵察部隊の報告によれば………つい先日、国交なんぞというものをしていたとか…。
鎖国状態のこの国が…何かの間違いだろうと思っていたが…。
(………事実ね)


