衣服越しにじわりと伝わってくる他人の温もりが、今はとても懐かしく思える。熱くなる目頭を押さえて顔を上げれば、こちらを見下ろしてくる美しいエメラルドの瞳とぶつかった。大きな緊張感を孕んだそこには、心なしか安堵の色が見えた。
レトに向かってゆっくりと近付いてくる幾つもの魔法陣と、我関せずとばかりに生え伸び続ける枝を交互に見回しながら、ノアは苦笑を浮かべた。
「…これはまたまた…助太刀にしては少々派手ですね。………二重に張り巡らされた城の結界を、まさか外から突き破るとは…………恐ろしい女王陛下様だ。…レトバルディア、よく聞いて下さい」
そう言いながらノアは宙に向かって軽く指を鳴らした。…直後、物凄い速さで距離を詰めてきた魔法陣の一つが、ノアの黒い魔法陣に飲み込まれた。
……それと同時に、ノアの右頬に赤々とした傷が走ったのを、レトは見逃さなかった。
「ノア…!」
「暴走した魔法は、術者を守り続けます。加えてその力も強大です。故に…自我を支配されたユノマリアンのあの結界は、恐らく私の力でも破る事は不可能です」
枝を突き破って勢いよく飛来してきた巨大な氷柱に向かって、ノアはすかさず手を振り翳す。
氷の塊が目の前で粉砕した途端、またもやノアの肌に大きな傷が一つ、刻まれた。
流れる鮮血を凝視しながら、レトは泣きそうな表情を浮かべて唇をわななかせる。
「彼の結界を解く術は、彼自身が結界を意識的に解くか、もしくは………彼の魔力と同等…否、それ以上の魔力をぶつけて、強引に術を絶たせるかです。………可能性に賭けるならば、後者。………その役は、私が引き受けます。…貴方はそれまで身を潜めて……その一瞬の隙を、狙って下さい」
「………ノアは…どうなるの?…それって……ノアも、危ないんじゃないの?…さっきからずっと…たくさん…傷が…。……ねぇ、ノア…!」
「―――勝負は一瞬です、レトバルディア」
漆黒の模様が隙間無く浮かぶ肌を、幾筋もの赤い線が走っていく。
指の股、爪の間にまで赤が滲み渡ったノアの手が…レトの背中を、押した。
「一瞬です。この身を犠牲にして得られる時間は、本の一瞬なのですから」
レトに向かってゆっくりと近付いてくる幾つもの魔法陣と、我関せずとばかりに生え伸び続ける枝を交互に見回しながら、ノアは苦笑を浮かべた。
「…これはまたまた…助太刀にしては少々派手ですね。………二重に張り巡らされた城の結界を、まさか外から突き破るとは…………恐ろしい女王陛下様だ。…レトバルディア、よく聞いて下さい」
そう言いながらノアは宙に向かって軽く指を鳴らした。…直後、物凄い速さで距離を詰めてきた魔法陣の一つが、ノアの黒い魔法陣に飲み込まれた。
……それと同時に、ノアの右頬に赤々とした傷が走ったのを、レトは見逃さなかった。
「ノア…!」
「暴走した魔法は、術者を守り続けます。加えてその力も強大です。故に…自我を支配されたユノマリアンのあの結界は、恐らく私の力でも破る事は不可能です」
枝を突き破って勢いよく飛来してきた巨大な氷柱に向かって、ノアはすかさず手を振り翳す。
氷の塊が目の前で粉砕した途端、またもやノアの肌に大きな傷が一つ、刻まれた。
流れる鮮血を凝視しながら、レトは泣きそうな表情を浮かべて唇をわななかせる。
「彼の結界を解く術は、彼自身が結界を意識的に解くか、もしくは………彼の魔力と同等…否、それ以上の魔力をぶつけて、強引に術を絶たせるかです。………可能性に賭けるならば、後者。………その役は、私が引き受けます。…貴方はそれまで身を潜めて……その一瞬の隙を、狙って下さい」
「………ノアは…どうなるの?…それって……ノアも、危ないんじゃないの?…さっきからずっと…たくさん…傷が…。……ねぇ、ノア…!」
「―――勝負は一瞬です、レトバルディア」
漆黒の模様が隙間無く浮かぶ肌を、幾筋もの赤い線が走っていく。
指の股、爪の間にまで赤が滲み渡ったノアの手が…レトの背中を、押した。
「一瞬です。この身を犠牲にして得られる時間は、本の一瞬なのですから」


