人の頭くらいの、小さな魔法陣だった。
中央に浮かぶ瞼の無い目玉はギョロギョロと回転し…恐らく、自分を捜している。
あの不気味な追跡者に、レトは短時間で既に二度も見付けられてしまっていた。
少しでも物音を立てれば、あの目玉は直ぐさまこちらの気配を察知して、身に纏う魔法陣を発動してくる。
一面氷の刺だらけの壁が出現し、押し潰す勢いで突進してくるのだ。
…幼い頃にコムの店で見せてもらった、古い文献の挿絵で見た気がする。確かあれは、古代の拷問器具だった筈だ。
足場の悪いこの空間では一たまりも無いものだ。避ける度に何度足を滑らせて落ちかけたことか。
何とかそれらの奇怪な刃物をかい潜ってきたが、負傷した身体での逃亡は容赦無くレトの体力を削っていた。
正直な話、次に見付かってしまえば逃げ切れる自信が無い。
(………息、も…心臓も…うるさい…)
音という音の全てが煩わしい。
最早痛みのためか、寒さのせいなのか分からない身体の震えを根気で抑え、レトは石の様に硬直した。
…柱を隔てた表側を、青白い光が横切っていく。
完全に気配を殺したレトの存在に気付かぬまま、目玉は素通りしていった。
物音は立てぬ様にと警戒を解かずに、レトは安堵の息を漏らす。
…だが、敵はそんな僅かな暇さえも見逃してくれなかった。
直ぐに霞んで消えていく、白く色付いた安堵の吐息を…目玉は、目敏く見付けてきた。
…ハッと、漏れ出る自分の吐息に気付き、慌てて口を覆うが…時既に遅し。
レトが隠れる柱の影に向かって、魔法陣は即座に発光した。
「―――っ…あああ!」
こうなればもう、やけくそだ。見付かってしまったのならば、隠れる必要は無い。
レトは影から飛び出すと、浮遊する目玉に向かって短剣を放った。
回転する刃が目玉を両断するのと、魔法陣が術を発動させるのはほぼ同時だった。
ズルリと下半分が落ちた目玉の魔法は、攻撃の矛先を誤ったのか、青白い光はレトから外れて、その足元に放たれた。
中央に浮かぶ瞼の無い目玉はギョロギョロと回転し…恐らく、自分を捜している。
あの不気味な追跡者に、レトは短時間で既に二度も見付けられてしまっていた。
少しでも物音を立てれば、あの目玉は直ぐさまこちらの気配を察知して、身に纏う魔法陣を発動してくる。
一面氷の刺だらけの壁が出現し、押し潰す勢いで突進してくるのだ。
…幼い頃にコムの店で見せてもらった、古い文献の挿絵で見た気がする。確かあれは、古代の拷問器具だった筈だ。
足場の悪いこの空間では一たまりも無いものだ。避ける度に何度足を滑らせて落ちかけたことか。
何とかそれらの奇怪な刃物をかい潜ってきたが、負傷した身体での逃亡は容赦無くレトの体力を削っていた。
正直な話、次に見付かってしまえば逃げ切れる自信が無い。
(………息、も…心臓も…うるさい…)
音という音の全てが煩わしい。
最早痛みのためか、寒さのせいなのか分からない身体の震えを根気で抑え、レトは石の様に硬直した。
…柱を隔てた表側を、青白い光が横切っていく。
完全に気配を殺したレトの存在に気付かぬまま、目玉は素通りしていった。
物音は立てぬ様にと警戒を解かずに、レトは安堵の息を漏らす。
…だが、敵はそんな僅かな暇さえも見逃してくれなかった。
直ぐに霞んで消えていく、白く色付いた安堵の吐息を…目玉は、目敏く見付けてきた。
…ハッと、漏れ出る自分の吐息に気付き、慌てて口を覆うが…時既に遅し。
レトが隠れる柱の影に向かって、魔法陣は即座に発光した。
「―――っ…あああ!」
こうなればもう、やけくそだ。見付かってしまったのならば、隠れる必要は無い。
レトは影から飛び出すと、浮遊する目玉に向かって短剣を放った。
回転する刃が目玉を両断するのと、魔法陣が術を発動させるのはほぼ同時だった。
ズルリと下半分が落ちた目玉の魔法は、攻撃の矛先を誤ったのか、青白い光はレトから外れて、その足元に放たれた。


