光は、もう嫌と言う程に見慣れた青白い色を帯びていた。謁見の間全体の空間を掻き回す様に隅々まで行き届くと、ガクッ…と室内の気温が一気にまたマイナスの世界に落ちたのが分かった。
視界にちらつく切り揃えた前髪が、先端から白く凍てついていく。吐息の白さも濃さを増し、寒さに縮こまる身体は自然、ぎこちない動きを強いられていく。
この空間だけがやけに視界がクリアで、そして妙に息苦しい。
床に張りつめていた氷の海が意思でも持っているかの如く、大理石を舐めながら縦横無尽に這い回る。…目下の地上は、おぞましく奇怪な景色へと豹変しており、とてもじゃないが地に足を付けるのは躊躇われた。代わりに薄っすらとした青い霧が、歩く様な速さでゆっくりと漂っている。
顔をしかめながら、青白い別世界の地上を見下ろしていたレトだったが、彼の警戒心は瞬く間に謁見の間の扉へと走った。
自分に注がれる真っ直ぐなその気配に、レトは見向きもせず……瞬間、壁に突き刺した剣を抜きもせず、その場から跳んだ。
―――直後、たった今までレトがいたその場所に、直径三メートル近くはあるであろう太い氷柱が何処からともなく現れ、突き刺さった。
当たれば、串刺しどころでは済まない。見るも無残な肉塊と化すのは、目に見えている。
「―――…うわっ…!」
そのあまりの衝撃に、室内全体が小刻みに揺れた。広範囲に渡って半壊した壁面に幾筋もの亀裂が走る。城は元々丈夫な造りであるためさすがに陥没はしなかったが、何度も繰り返せば風穴の一つや二つくらい容易いだろう。
半ば身投げ同然にとにかく退避したレトは、いつもの俊敏な運動神経も発揮出来ず、それでもなんとか反射的に受け身はとれたものの、結果的には身体をしたたかに打ちつける形で床に転がり落ちた。
(……っ…!?)
忙しく悲鳴を上げ続ける身体を労わる暇など、敵は与えてくれない。床一面を這いずり回っていた厚い氷の波が、投じられた餌に群がるかの様にレトに向かってズルズルと集まってきたのだ。
視界にちらつく切り揃えた前髪が、先端から白く凍てついていく。吐息の白さも濃さを増し、寒さに縮こまる身体は自然、ぎこちない動きを強いられていく。
この空間だけがやけに視界がクリアで、そして妙に息苦しい。
床に張りつめていた氷の海が意思でも持っているかの如く、大理石を舐めながら縦横無尽に這い回る。…目下の地上は、おぞましく奇怪な景色へと豹変しており、とてもじゃないが地に足を付けるのは躊躇われた。代わりに薄っすらとした青い霧が、歩く様な速さでゆっくりと漂っている。
顔をしかめながら、青白い別世界の地上を見下ろしていたレトだったが、彼の警戒心は瞬く間に謁見の間の扉へと走った。
自分に注がれる真っ直ぐなその気配に、レトは見向きもせず……瞬間、壁に突き刺した剣を抜きもせず、その場から跳んだ。
―――直後、たった今までレトがいたその場所に、直径三メートル近くはあるであろう太い氷柱が何処からともなく現れ、突き刺さった。
当たれば、串刺しどころでは済まない。見るも無残な肉塊と化すのは、目に見えている。
「―――…うわっ…!」
そのあまりの衝撃に、室内全体が小刻みに揺れた。広範囲に渡って半壊した壁面に幾筋もの亀裂が走る。城は元々丈夫な造りであるためさすがに陥没はしなかったが、何度も繰り返せば風穴の一つや二つくらい容易いだろう。
半ば身投げ同然にとにかく退避したレトは、いつもの俊敏な運動神経も発揮出来ず、それでもなんとか反射的に受け身はとれたものの、結果的には身体をしたたかに打ちつける形で床に転がり落ちた。
(……っ…!?)
忙しく悲鳴を上げ続ける身体を労わる暇など、敵は与えてくれない。床一面を這いずり回っていた厚い氷の波が、投じられた餌に群がるかの様にレトに向かってズルズルと集まってきたのだ。


