「―――王様の命令だって言ったら…止めてくれる?」
情けない年相応の子供の泣き顔で、力の無い囁き声で、彼が口にしたその言葉を耳にした途端。
ポロッと、右目の目尻から生温い何かが頬を伝って落ちたのに気が付いた。
唐突に襲ってきた、胸を締め付ける感覚。
とても息苦しい。胸の奥が、異様に熱い。
違和感の塊でしかない沸き上がるそれが、ノアは分からない。…少し前にフローラの死を見届けた時も、これと同じ感覚に襲われた気がする。
………分からない…分からないが……一つだけ分かっているのは、今自分は目の前の少年と瓜二つの、情けない面をしているという事だ。
眼球を潤す雫の落下は、一向に途切れない。
今私は、とても苦しいのに………矛盾しているのだが、不思議なことに、苦しくない。
苦しいのに、苦しくない、この胸の温かい熱。
「―――…貴方と…いう方、は…」
瞳と同じ様に揺れる声で、ノアは苦笑混じりに呟いた。この少年の言葉は……突き付けられた運命を受け入れようとする、覚悟の現れだった。
…王様なんて、もう要らない。大好きになっても、皆私を残して死んでいくから。悲しい思いしか、出来ないから。
それ以上、私は、ついていけないから。
要らないと、思っていたのに。
「―――………レトバルディア、私には……一つだけ願いがあります」
「……お願い…?」
小首を傾げるレトにノアはそっと目をつむり、額を合わせてきた。
合わさった額の、互いに共有する熱が、ジワリと肌に伝わる。
「―――ノアはもう、死にたいのです。レトバルディア」
「……いいよ………ノアが、好きな時に…」
「―――…何故、貴方が王に選ばれたのか……何となく、分かった気が致します」
そう言ってそっとレトから離れると、ノアは跪ずいたまま深々と頭を下げ。
「―――仰せのままに」
とだけ答えた。


