重い溜め息の様に、レトは言った。
……何故だろう?
普段はこんな事…考えもしないのに。
不意に、母親がいないという現実が…強く胸に響いた。
……どうしたんだろう…?
…………グルグルと…胸の辺りで…重い何かが、渦巻いている。
目の前のこの少年を見ているだけで……それは……激しく…。
生まれて初めての奇妙な感情に、レト自身無言で戸惑っていると…。
―――ボスッ…と、少し大きめの雪の塊が、勢いよく額に当たった。
雪を払い、覆われた真っ白な視界を元に戻そうとすると、調子の変わらない元気な声が、向かいから聞こえた。
「…何暗くなっているんだい?それがどうしたのさ。…僕は、生まれる前にお父様が亡くなられているよ」
………え、と少し驚いて顔を上げたレトに、また雪がぶつかった。
……父親の死を告白するユノは、変わらず元気で明るかった。
気に病む事は無い、死んでいるがそれが何なんだ、と軽くあしらう彼。
「ああ、もしかして寂しいのかい?……そんな風に考えては駄目だよ。………僕のお父様は病に倒れて亡くなられたが………最後まで、王族の威厳を無くさなかった。…………………悲しくなんかない。僕は、お父様の死を………誇に思うよ」
ユノは雪を構えるのを止め、手元で丸めて……それをポイッと、レノに投げた。
…レノは無意識でそれを受け取った。
「………残された側が悲しんでいたら、死んだ人間が、可哀相だろう?」


