グッと、ノアの顔を挟む両手に力を込める。
外れる気配のない二人の視線は、何処か緊張感に似たものが張り詰めていて、互いに一歩も譲らぬとばかりに終わりの見えない凝視を続けていた。
誰にも明かしたことのない心の内を、この少年は覗き見ようとしている。
……無理…?…私が?
………私が?
………私、は。
「…無理など、しておりません」
「……ノア、もう充分だから……………全部抱え込まなくて、いいから」
「…違います……私は平気です。私は…」
「だったら…なんでそんなに悲しい顔をするの…?」
「私、は……!」
悲しい顔?
それはどんなもの?
悲しんでいるのはむしろ、貴方の方ではないですか。
そんなに唇を噛み締めて。泣き腫らした目を皿に潤ませて。
その綺麗な瞳を歪ませて。
…何故、貴方は私のために泣くのですか。
私は、長生きし過ぎたただの魔の者です。
城を守るのが、守人となった私の役目。
全部、私の役目。城を守れという、亡き陛下からの命令に従うのみ。
だから私は、ちっとも、無理なんて。
…ちっとも。
『―――ノア、この城はもう駄目だ。バリアンの兵士共が迫っている。火の回りも早い。…イーオ達は、無事に逃げ出せただろうか…。…悔しいが、私は退く。………生きて出られるかは分からないが』
『…陛下…私もお供致します。ノアめは、何処へでも陛下と共に…』
『―――いいや、お前には…守人になってもらいたい。守人が消されてしまった今、頼りはお前だけだ。…いつかまた……ここに帰ってくる。……私の血筋が……いつか。……それまで、この城を』
―――…陛下。
………陛下。
………貴方様の命とあらば、ノアは従います。陛下。
ですが、陛下。
私は。
私には………たった一つだけ…願いがあります。
私は。
本当は。


