本の少しだけ彼女との距離を詰め、レトは小さく口を開いた。
「………僕…ユノが凄く…羨ましい…」
「………え…?」
剣を突き付けられた人間が言う台詞ではない、何の脈絡も無いレトの呟きに、サリッサは一瞬唖然とした表情で瞬きを繰り返した。
白い吐息を交えて、レトはゆっくりと言の葉を続ける。
「………僕、母さんがいないから……お母さんってどういうものなのか…全然、知らなくて…。………父さんがいたから…母さんがいなくても充分だって思ってたけど………やっぱり、母さんって良いね。………僕、ずっと前から思ってたんだ」
守ってもらえるユノが、羨ましい。
お母さんという貴女の存在が、羨ましい。
「…サリッサさんは、お母さんだもんね。……お母さんだから、ユノが大切なんだよね…。……だから、ねぇ……サリッサさん………………僕のこと、いっぱい…たくさん………恨んでね…」
「………何、を…」
「…僕もね……ユノが、大切なんだ…。…初めて会った時から、僕は…ユノを守りたいって………これからもずっと守りたいって…思ってた。今だって…それは変わらない。………でも僕…もう…守ってあげられないんだ。…僕、自分も、ユノも……貴女も、裏切ってる…」
そんな裏切り者の僕を、たくさん…たくさんたくさんたくさん、恨んで下さい。
貴女には、その資格があるから。
そう言って浮かんだ目の前の表情は、何とも不器用な微笑。
悲しげな、笑顔で。
見詰めていればいる程、ただただ悲しくなるばかりの、11歳の子供には似つかわしくない、笑顔で。
「……さっき、ユノに言ってきた。………ごめんなさいって……最後に謝ってきたんだ。謝っても許してくれないだろうけど…いいんだ。……………だから…サリッサさんにも僕…謝らないといけないね…」
その、今にも泣きそうな笑顔で。
強引に笑顔を浮かべて。
「―――…サリッサさん、ごめんなさい……………………………………僕はユノを、殺すね」
「………僕…ユノが凄く…羨ましい…」
「………え…?」
剣を突き付けられた人間が言う台詞ではない、何の脈絡も無いレトの呟きに、サリッサは一瞬唖然とした表情で瞬きを繰り返した。
白い吐息を交えて、レトはゆっくりと言の葉を続ける。
「………僕、母さんがいないから……お母さんってどういうものなのか…全然、知らなくて…。………父さんがいたから…母さんがいなくても充分だって思ってたけど………やっぱり、母さんって良いね。………僕、ずっと前から思ってたんだ」
守ってもらえるユノが、羨ましい。
お母さんという貴女の存在が、羨ましい。
「…サリッサさんは、お母さんだもんね。……お母さんだから、ユノが大切なんだよね…。……だから、ねぇ……サリッサさん………………僕のこと、いっぱい…たくさん………恨んでね…」
「………何、を…」
「…僕もね……ユノが、大切なんだ…。…初めて会った時から、僕は…ユノを守りたいって………これからもずっと守りたいって…思ってた。今だって…それは変わらない。………でも僕…もう…守ってあげられないんだ。…僕、自分も、ユノも……貴女も、裏切ってる…」
そんな裏切り者の僕を、たくさん…たくさんたくさんたくさん、恨んで下さい。
貴女には、その資格があるから。
そう言って浮かんだ目の前の表情は、何とも不器用な微笑。
悲しげな、笑顔で。
見詰めていればいる程、ただただ悲しくなるばかりの、11歳の子供には似つかわしくない、笑顔で。
「……さっき、ユノに言ってきた。………ごめんなさいって……最後に謝ってきたんだ。謝っても許してくれないだろうけど…いいんだ。……………だから…サリッサさんにも僕…謝らないといけないね…」
その、今にも泣きそうな笑顔で。
強引に笑顔を浮かべて。
「―――…サリッサさん、ごめんなさい……………………………………僕はユノを、殺すね」


