“理の者”であるイーオの力は、第三の力…『解離と結合』である。
その手で触れた相手の、怪我や痛み、病、感情…とにかく生命以外の全てを抜き取り、自身を器として溜め込む事が出来る能力である。
イーオが外に出そうとしない限り、溜め込んだものが外界に漏れ出る事は無いが……外に出す場合は何か媒体となるものに直接触れて、移し替えなければならないのだ。
医者として生きてきたイーオの小柄な身体には、何百、何万という数え切れない程の痛みや病が消えずにそのまま残っていた。
…誰かに移してまで外に出す気は無い。イーオは“器”として、このまま墓場まで持って行くつもりだった。
皆が嫌いなものは、全部私が背負っていい。ちょっと前までは…そう、思っていたのに。
「…全部…あなたにあげちゃったわ…。……ごめんなさい、ね…ヨルン。…でもね、こうする…しか…なかった、のよ」
…自己治癒能力ですぐに回復してしまうヨルンも、この痛みと病の絶え間無い嵐には、さすがに堪えられなかった様だった。
今この大蛇の身体の中では、一体どれ程の激痛が走り回り、様々な病が骨と肉を食い荒らしているのだろうか。
それはきっと、想像も出来ない苦痛なのだろう。
鱗の輝きや眼球、全身の血色が見る見る内に黒ずんでいくこの大蛇の息が絶えるのも、もう間近だ。
まだフワリフワリと漂う漆黒のダイヤモンドダストの、奇妙な美しさを見上げながら、イーオは動かすのも億劫な口を、静かに開いた。
「……………もう…こんなしわしわの、おばあちゃんなんだから……私は…フローラ…だなんて…可愛い、名前…似合わ、ないわよ…。………ノア…」
「―――いいえ。貴女は、どんなに姿が変わろうとも……私の可愛い、フローラですよ」
闇夜を払いのける、美しいエメラルドの澄み切った色が自分を見下ろしていたのは、はたしていつからだったのか。
気が付けば、いつの間にか重なりあっていたその視線に、イーオは弱々しく微笑んだ。
佇む長身のシルエット。綺麗な笑みを浮かべたノアが、手を伸ばせば届く距離に立っていた。
その手で触れた相手の、怪我や痛み、病、感情…とにかく生命以外の全てを抜き取り、自身を器として溜め込む事が出来る能力である。
イーオが外に出そうとしない限り、溜め込んだものが外界に漏れ出る事は無いが……外に出す場合は何か媒体となるものに直接触れて、移し替えなければならないのだ。
医者として生きてきたイーオの小柄な身体には、何百、何万という数え切れない程の痛みや病が消えずにそのまま残っていた。
…誰かに移してまで外に出す気は無い。イーオは“器”として、このまま墓場まで持って行くつもりだった。
皆が嫌いなものは、全部私が背負っていい。ちょっと前までは…そう、思っていたのに。
「…全部…あなたにあげちゃったわ…。……ごめんなさい、ね…ヨルン。…でもね、こうする…しか…なかった、のよ」
…自己治癒能力ですぐに回復してしまうヨルンも、この痛みと病の絶え間無い嵐には、さすがに堪えられなかった様だった。
今この大蛇の身体の中では、一体どれ程の激痛が走り回り、様々な病が骨と肉を食い荒らしているのだろうか。
それはきっと、想像も出来ない苦痛なのだろう。
鱗の輝きや眼球、全身の血色が見る見る内に黒ずんでいくこの大蛇の息が絶えるのも、もう間近だ。
まだフワリフワリと漂う漆黒のダイヤモンドダストの、奇妙な美しさを見上げながら、イーオは動かすのも億劫な口を、静かに開いた。
「……………もう…こんなしわしわの、おばあちゃんなんだから……私は…フローラ…だなんて…可愛い、名前…似合わ、ないわよ…。………ノア…」
「―――いいえ。貴女は、どんなに姿が変わろうとも……私の可愛い、フローラですよ」
闇夜を払いのける、美しいエメラルドの澄み切った色が自分を見下ろしていたのは、はたしていつからだったのか。
気が付けば、いつの間にか重なりあっていたその視線に、イーオは弱々しく微笑んだ。
佇む長身のシルエット。綺麗な笑みを浮かべたノアが、手を伸ばせば届く距離に立っていた。


