亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


…握り過ぎて生温くなってしまった剣の柄を、また強く握り締めて………やり場の無い怒りをぶつけるかの如く、役立たずな重いそれを床に叩き付けた。
重低音の金切り声を上げて何度か固い床を跳ねた後…剣は、床を這う冷気の波に呑まれて凍てついた。


今の今まで、悲鳴と怒鳴り声と鳥の鳴き声で騒々しかった空間に、不気味な静寂が流れる。
何処からか伝わってくる地響きを耳にしながら…ユノは独り、唇を噛み締めていた。

爪が食い込む程握り締めた両の拳を震わせ、虚しく仁王立ちする自分の足元を見下ろしたまま…低い声音を漏らす。

聞き人は、誰もいない。






「―――…んな………皆……邪魔ばっかり……邪魔…邪魔…邪魔…邪魔。…そんなに…あいつが良いの…あいつが相応しいの…あいつなの…。………………………………殺さないと」

ヒュウッ…と風が辺りを吹き渡るや、ユノを囲む様に幾つもの大きな魔法陣がドーム状に浮かび上がった。
鋭利な殺意をさらけ出した強力な魔術を周囲に従えたまま、ユノは歩き出す。

そのしっかりとした歩みに反して、前を見据える彼の瞳は、酷く虚ろだった。
曇りガラスの様な、生気の無い偽りの輝きだというのに、揺らぐ無機質な光は鮮血よりも鮮やかで、朱よりも濃い…濁りの無い赤色だった。

「―――………レト………何処だい…?………レト…レト……………何処に行ったんだい…?」



誰かに向かって言っている訳でも無い呟きは、彼を避ける様に切り開いていく無限の空間に漂っていった。








そう…隠れんぼは。




…もう、飽きたんだ。