旋風を交えた吹雪を散らしていく風の様な怪鳥は、緩やかな孤を描きながら旋回し、物凄い早さでユノの頭上を通り過ぎた。
巨大な翼が起こす気流が冷たい空気を引き連れ、地上に佇むユノを大きく煽った。
高い天井の闇を蹴散らす勢いで、アルバスは飛ぶ。嵐にも似たその羽ばたきを、ユノは狂気の孕んだ瞳で睨み付けた。
「………何、で……何で…っ…!!………どいつもこいつも、何で皆僕の邪魔をするんだ!!」
憎悪に震える叫び声が響き渡ると同時に、旋回し続けるアルバスの周りに幾つもの青白い光が瞬いた。
それは魔法陣を象る前に、獲物目掛けて氷の刃を吹き付ける。
闇に弱い鳥目にとって、これは高いハードルだ。隙間という隙間が埋め尽くされた激しい攻撃だったが…矢の嵐の如き刃の中を、アルバスの巨体は紙一重で次々に避けていった。
雛鳥だった時の、あの鈍い運動神経は何だったのだろうかと思うくらいの俊敏な動きで、掴まれたレトにもそれらは掠りもしない。
その最中、歪な空間が再び捩曲がり始めたのを、アルバスは見逃さなかった。
魔法陣の影響か、もしくは先程から断続的に生じている地震のせいか、密閉されていた空間のとある一部に、真っ暗な闇色の穴が口を開け始めた。
たいして大きくはない穴は、直ぐに口を閉ざしにかかる。
何処に続いているのか分からない唯一の突破口に向かって、アルバスは獲物を狩りにかかるかの様に羽をすぼめて直進した。
背後から飛来する氷のつぶてを振り切り、真っ直ぐに。
すぼめたアルバスの巨体が、閉じていく穴をギリギリのところで通過する間際………その一瞬だけ、レトは振り返った。
容赦無く追い掛けてくる凶暴な魔術の連鎖の、その奥。
たった独りで佇みながら、こちらを見上げる彼の姿。
…視界の隅で小さくなるや否や、あっという間に見えなくなってしまうと…レトは零れそうな涙を堪え、何かを振り払う様に叫んだ。
「――玉座のある所に…行って、アルバス!」


