外に通じる穴も道も無いこの空間で吹雪など、魔術が発動していない今、まず有り得ないのに。
不意打ちの様な吹雪の突風により、ユノの身体は前へ傾むいた。バランスは崩れ、剣は甲高い悲鳴を上げて脇に転がり落ちた。
悪戯な冷たい雪は、その一瞬だけだったが、二人の視界を覆った。
目前に控えていた刃に対し静かに瞼を閉じていたレトは、唐突な吹雪の直撃を受け、その勢いと冷たさに思わず声を漏らした。
寒いだとか、痛いだとか、感じることが出来なくなっていた筈なのに、柔らかな風が身体を撫でていく感覚だけは分かってしまうから不思議だ。
突風に吹かれて揺れる身体。
髪は大きく靡くし、手足も煽られて揺れ動く。
やけに強い吹雪だ。
風の勢いは何故か、一向に衰えない。
風が、冷たい。
終わりの見えない吹雪は、止まない風圧を全身に浴びせ続けるし。
胃が持ち上がる様な、癖のある浮遊感を感じて…。
………浮遊、感?
繰り返し、身体が上下に浮いたり沈んだりする奇妙な感覚に仰天して目を見開けば…霞んだレトの視界に飛び込んできたのは…。
………物凄い早さで遠ざかる、大理石の床がある景色だった。
…否、これは…床が離れているのではなくて。
今、僕は…。
「―――…飛ん、で…」
―――キルルルル、という笛の音色に似た甲高い鳴き声がすぐ頭上から聞こえ、レトはぼんやりとした表情で見上げた。
…見上げた先には、自分よりも何倍も大きい…美しい鳥が、いた。
五メートル近くはあるだろう。銀の鱗に覆われた光沢のある羽は空を切り、羽ばたく度に吹雪を生み出している。
華奢に見えて力強い長い両足は、レトの身体をしっかりと掴んで離さない。
鋭い牙が覗く嘴から、また雄叫びが一つ放たれた。
その巨体には幼過ぎるかもしれないつぶらな瞳が、一瞬だけ自分を映した。
丸い瞳は、とても優しい色を帯びていて。
「…アルバス……?」
成鳥のカーネリアンが、応える様に鳴いた。
不意打ちの様な吹雪の突風により、ユノの身体は前へ傾むいた。バランスは崩れ、剣は甲高い悲鳴を上げて脇に転がり落ちた。
悪戯な冷たい雪は、その一瞬だけだったが、二人の視界を覆った。
目前に控えていた刃に対し静かに瞼を閉じていたレトは、唐突な吹雪の直撃を受け、その勢いと冷たさに思わず声を漏らした。
寒いだとか、痛いだとか、感じることが出来なくなっていた筈なのに、柔らかな風が身体を撫でていく感覚だけは分かってしまうから不思議だ。
突風に吹かれて揺れる身体。
髪は大きく靡くし、手足も煽られて揺れ動く。
やけに強い吹雪だ。
風の勢いは何故か、一向に衰えない。
風が、冷たい。
終わりの見えない吹雪は、止まない風圧を全身に浴びせ続けるし。
胃が持ち上がる様な、癖のある浮遊感を感じて…。
………浮遊、感?
繰り返し、身体が上下に浮いたり沈んだりする奇妙な感覚に仰天して目を見開けば…霞んだレトの視界に飛び込んできたのは…。
………物凄い早さで遠ざかる、大理石の床がある景色だった。
…否、これは…床が離れているのではなくて。
今、僕は…。
「―――…飛ん、で…」
―――キルルルル、という笛の音色に似た甲高い鳴き声がすぐ頭上から聞こえ、レトはぼんやりとした表情で見上げた。
…見上げた先には、自分よりも何倍も大きい…美しい鳥が、いた。
五メートル近くはあるだろう。銀の鱗に覆われた光沢のある羽は空を切り、羽ばたく度に吹雪を生み出している。
華奢に見えて力強い長い両足は、レトの身体をしっかりと掴んで離さない。
鋭い牙が覗く嘴から、また雄叫びが一つ放たれた。
その巨体には幼過ぎるかもしれないつぶらな瞳が、一瞬だけ自分を映した。
丸い瞳は、とても優しい色を帯びていて。
「…アルバス……?」
成鳥のカーネリアンが、応える様に鳴いた。


