亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



外に出ると、淡い朝日が全身に降り懸かってきた。
空はいつも通りの曇り空だが、何だか明るい気がする。

足元に目をやると、自分とは違う足跡が先の方まで続いていた。
……多分、あの少年の…ユノ王子のものだろう。


「………」

足跡をじっと見下ろしながら、レトはそれを辿って行く。

ザクザクと深雪に足を突っ込んで進む。



………洞窟から少し離れた所で、足跡は途中で切れていた。


…周囲を見回しても、あるのは凍て付いた樹々の群ればかり。

人の姿など皆無な空間が広がっていた。………しかし、気配ははっきりと…。





―――ヒュッ…。
















正面から、何かが空を切る音が聞こえた。

研ぎ澄まされた聴覚はその接近物との距離、速さを瞬時に捉えた。


―――が。
















……ベシャリ、と柔らかい雪の塊が、ピクリとも動かないレトの顔面に、当然ながらぶつかった。



……前方に群れなす樹々の、その内の一本の影から……半ば呆れたユノが出て来た。


………やっぱり動かないレトを眺めて、ユノは溜め息を吐いた。




「…………避けなよ。どうして避けないの?……今絶対見切ってたよね…」

「……………………………何となく…」

「変な子供」


ユノは苦笑しながら目前まで近寄ると、先程と同様に顔の雪を払ってくれた。



ほぼ同じ位の目線の高さ。

レトを映す鮮やかなエメラルドグリーンの瞳は、実に楽しそうに笑い、輝いていた。


………世の中にこんな綺麗な男の子もいるんだな、とレトは内心思っていた。