亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

そんなボロボロの容姿で笑っているのだから、もう滑稽でしかない。


そんな微笑とも言えない微笑を、小さな雛鳥はふと足を止めて見詰めた。
ぎこちない笑顔はとても悲しげに涙し、ただただ雛鳥に向けられていた。

冷たい床に近い、低い位置で交わる視線。
響き渡るユノの足音が何処か遠くに感じる程、その一時は、静かだった。









いつでも、何処へ行く時でも、追い掛けずにはいられない…大好きなものは、何やら痛そうに横たわって、自分に向かって、アルバスと呼んでいる。

アルバスというのは、自分のことなのだといつからか分かっていて。


大好きなものに呼ばれたから、嬉しくて傍に行きたいのに。

大好きなものは自分を呼ぶのに、来るなと怖い顔をする。


大好きなものはいつも無表情なのに、今は違う顔をしている。


大好きなものは、自分を見ている。
でも、もう一つの大好きなものが、大好きなものに近寄っていく。

もう一つの大好きなものの後ろ姿で、大好きなものが見えなくなっていく。

どんどん、見えなくなっていって。






完全に見えなくなる、その時。










「逃げるんだよ、アルバス」













大好きなものが見えなくなるのが嫌で、アルバスはいつの間にか、駆け出していた。







やけに滑る平面の地面を走り、パタパタと黒い羽をばたつかせて。

キラキラと光る、でも綺麗ではない長いものを持ったもう一つの大好きなものが、大好きなものに向かって振りかぶろうとしていた。


それが凄く嫌で、もっと早く走れないかと、もっと首が伸びないものかと、何度も、何度も地を跳ねて。







跳ねて。

身体を浮かせて。

前へ。





前へ。












前へ、飛んで。


















「―――っ…!?」

剣を振り下ろそうとした瞬間、無防備だったその背中を…何処からともなく吹き付けてきた吹雪が押した。