固い剣の刃先が、ピタリと首筋に当てられたのがその金属特有の冷たさで分かった。
微かに上下する身体に、刃は食い込むか食い込まないかの所で静止しているらしい。皮膚を裂いた時の痛みは、まだ無い。
「……こんなこと、本当は嫌なのに。………君を見ていると…僕は………頭が、おかしくなってくる……どうしようもないくらい、苛々する…。…凄く、苦しいよ…レト」
これ以上苦しいのは、もう嫌だ。
さっさと終わらせて楽になりたい。早く、早く。
「………僕が…まだ…君を可哀相だって思える内に…終わらせないと………僕はきっと…僕でいられなくなるだろうから…」
この赤い眼球の奥が、疼くんだ。君の姿を映すだけで、この目は、悍ましい憎悪を孕み始めるんだ。
おかしいんだよ、僕は。………あの“彼”を見てしまってから…僕は、もう。
ユノはそっと、剣を両手で握り締めた。鋭い刃先が狙いを定めた白い首筋に、このまま落としてしまえば…この狩人は間違いなく息絶えるだろう。
動かぬ屍と化したレトを想像すれば、狂ったように歓喜する自分と、ただただ泣き叫ぶ自分の両方の姿が、頭に浮かんだ。
正反対の自分は、どちらも自分だった。
どちらも、嫌で仕方なかった。
全ては、僕自身のため。
僕の存在価値を探す旅の、終着点。
だから、全部仕方ない。
「―――仕方ないんだ」
ゆらりと揺らめく赤い瞳が、まるで別の生き物であるかの様に目下のレトを冷淡な眼差しで映した。
…ユノの意に反して、剣を握る両手が動く。
皮膚を撫でていた先端を僅かに浮かせて、そして力を込めた。
ただ真下に下ろすだけの、簡単な動作。
次の瞬間には、柔らかな皮と肉を裂いて固い床を鳴らしているだろう。
その、刹那だった。
「チチチッ」
…不意に空気をか細く震わせた小さな音色が、絶命まで本の数ミリという所でユノの手を止めた。
背後から聞こえてきた鳴き声に振り返ると同時に、足元に横たわったままのレトが、掠れた声で叫び声を上げた。
「…駄目…駄目だって…!……アルバス…!」
微かに上下する身体に、刃は食い込むか食い込まないかの所で静止しているらしい。皮膚を裂いた時の痛みは、まだ無い。
「……こんなこと、本当は嫌なのに。………君を見ていると…僕は………頭が、おかしくなってくる……どうしようもないくらい、苛々する…。…凄く、苦しいよ…レト」
これ以上苦しいのは、もう嫌だ。
さっさと終わらせて楽になりたい。早く、早く。
「………僕が…まだ…君を可哀相だって思える内に…終わらせないと………僕はきっと…僕でいられなくなるだろうから…」
この赤い眼球の奥が、疼くんだ。君の姿を映すだけで、この目は、悍ましい憎悪を孕み始めるんだ。
おかしいんだよ、僕は。………あの“彼”を見てしまってから…僕は、もう。
ユノはそっと、剣を両手で握り締めた。鋭い刃先が狙いを定めた白い首筋に、このまま落としてしまえば…この狩人は間違いなく息絶えるだろう。
動かぬ屍と化したレトを想像すれば、狂ったように歓喜する自分と、ただただ泣き叫ぶ自分の両方の姿が、頭に浮かんだ。
正反対の自分は、どちらも自分だった。
どちらも、嫌で仕方なかった。
全ては、僕自身のため。
僕の存在価値を探す旅の、終着点。
だから、全部仕方ない。
「―――仕方ないんだ」
ゆらりと揺らめく赤い瞳が、まるで別の生き物であるかの様に目下のレトを冷淡な眼差しで映した。
…ユノの意に反して、剣を握る両手が動く。
皮膚を撫でていた先端を僅かに浮かせて、そして力を込めた。
ただ真下に下ろすだけの、簡単な動作。
次の瞬間には、柔らかな皮と肉を裂いて固い床を鳴らしているだろう。
その、刹那だった。
「チチチッ」
…不意に空気をか細く震わせた小さな音色が、絶命まで本の数ミリという所でユノの手を止めた。
背後から聞こえてきた鳴き声に振り返ると同時に、足元に横たわったままのレトが、掠れた声で叫び声を上げた。
「…駄目…駄目だって…!……アルバス…!」


