久方振りに、ユノは目を閉じた。
グッと何かを堪える様に形のいい唇を噛むと、次に表に曝されたユノのつぶらな瞳は……赤く、それはそれは赤く…濁りの無い輝きで、レトを映した。
そこに、背筋も凍る様な憎悪の塊は、もう無かった。
ただそこにあるのは。
見ていると泣きそうになるくらいの、深い悲しみ。
そして、膨れきった空っぽの殺意。
彼の眼差しがとても真剣で、揺るぎない決意を孕んでいるのが分かると、レトの身体は反射的に身を捻って脇に転がり込んでいた。
さっきまでの無気力状態が嘘だったかの様に、今度は身体が思いのままに動く。
だが、やはり重傷の影響は否応なしに襲ってきた。多数の打撲と左腕からビリビリと伝わる激痛が、動きを鈍らせる。
弾けてはまた浮かぶ泡の如き魔法陣が、いつの間にかレトの前方でこちらを睨んでいた。
中央から淡い光と共に突出したのは、一見丸太と変わらぬ巨大な氷柱。
枝分かれした鋭い先端が、レトに向かって真っ直ぐ突き進んできた。
空を切るそれは、早い。
命中すれば胴体を刺し貫くであろう巨大な凶器を前に、レトは足を止めて身構えた。
左腕は、もう使えない。
動く右手で腰の剣を掴み、迫り来る氷の刃に向かって、斜め上に…一閃。
「―――…は…っ…」
大きく孤を描いた強烈な居合斬りは、氷柱の先端を水を割くかの様に華麗に切り落とした。
目にも止まらぬレトの機敏な動きは、止まらない。
先が平らな円柱と化した氷の塊に足をかけると、そのままレトは真上に跳躍した。
重力に従って暗がりの中を落ちる最中も、青白い氷の細かな刃が地上から飛んでくる。
一つ、二つと一部は耳を掠め、脇腹の辺りの衣服を裂いたが、咄嗟に掴んだ数本の投げナイフでそのほとんどを打ち落とすと、口にくわえていた剣を再度右手に掴み直した。
跳躍するレトの降り立つ先は…静かに佇む、ユノの元。
冷たい空気圧と重い殺気を全身に浴びながら、剣を構えたレトは突っ込んだ。
互いの距離が物凄い早さで縮まっていく中、レトの身体は、狩人の本能に染まっていく。
グッと何かを堪える様に形のいい唇を噛むと、次に表に曝されたユノのつぶらな瞳は……赤く、それはそれは赤く…濁りの無い輝きで、レトを映した。
そこに、背筋も凍る様な憎悪の塊は、もう無かった。
ただそこにあるのは。
見ていると泣きそうになるくらいの、深い悲しみ。
そして、膨れきった空っぽの殺意。
彼の眼差しがとても真剣で、揺るぎない決意を孕んでいるのが分かると、レトの身体は反射的に身を捻って脇に転がり込んでいた。
さっきまでの無気力状態が嘘だったかの様に、今度は身体が思いのままに動く。
だが、やはり重傷の影響は否応なしに襲ってきた。多数の打撲と左腕からビリビリと伝わる激痛が、動きを鈍らせる。
弾けてはまた浮かぶ泡の如き魔法陣が、いつの間にかレトの前方でこちらを睨んでいた。
中央から淡い光と共に突出したのは、一見丸太と変わらぬ巨大な氷柱。
枝分かれした鋭い先端が、レトに向かって真っ直ぐ突き進んできた。
空を切るそれは、早い。
命中すれば胴体を刺し貫くであろう巨大な凶器を前に、レトは足を止めて身構えた。
左腕は、もう使えない。
動く右手で腰の剣を掴み、迫り来る氷の刃に向かって、斜め上に…一閃。
「―――…は…っ…」
大きく孤を描いた強烈な居合斬りは、氷柱の先端を水を割くかの様に華麗に切り落とした。
目にも止まらぬレトの機敏な動きは、止まらない。
先が平らな円柱と化した氷の塊に足をかけると、そのままレトは真上に跳躍した。
重力に従って暗がりの中を落ちる最中も、青白い氷の細かな刃が地上から飛んでくる。
一つ、二つと一部は耳を掠め、脇腹の辺りの衣服を裂いたが、咄嗟に掴んだ数本の投げナイフでそのほとんどを打ち落とすと、口にくわえていた剣を再度右手に掴み直した。
跳躍するレトの降り立つ先は…静かに佇む、ユノの元。
冷たい空気圧と重い殺気を全身に浴びながら、剣を構えたレトは突っ込んだ。
互いの距離が物凄い早さで縮まっていく中、レトの身体は、狩人の本能に染まっていく。


