到底自分の声とは思えない程の絶叫が、密閉された空間内を反響した。
余韻を耳にしながら痛みに震える肩で懸命に息をする。
呼吸が上手く出来ているのかもよく分からない。何が起こったのか、分からない。
嗚咽を漏らし、激痛の根源となっている動かぬ左腕に恐る恐る目を向けた途端…生暖かい鮮血が、血の気を失った頬に飛散した。
レトの左腕は、天井から落下した細長い氷柱によって大きく切り裂かれていた。
刃先の狙いは外れて腕を貫く事は無かったが、肩から肘にかけて、垂直に皮膚がえぐられていた。 裂けた傷口はさして深くはないが大きく、出血が酷い。
左腕を中心に、白い衣服が真っ赤に染まっていくのをレトは大きく見開いた目で何処か他人事の様に見下ろしていた。
冷気で麻痺しているのに、激痛だけが盛大な自己主張を続ける。
見る見る内に血色が悪くなっていく左腕は、どんなに力を入れても全く動いてくれなかった。
左腕だけは、取って付けた人形の様だった。
千切れていないだけでも、幸いだったかもしれない。
先端がまだ皮膚に食い込んでいる氷柱が、重力に従ってゆっくりと脇に傾き、最後に傷口を余計に広げて転がり落ちた。
裂け目から溢れ出る生暖かい鮮血が、目下に血溜まりを描いていく。
「…君が、悪いんだよ……君が、君だから。………こんな痛い思いをするなら、最初から…君は…現れ、なければ……よかったの、さ…」
何処か弱々しい、途切れ途切れの言葉を耳にしながら、吹雪を交えた突風に押されるままに、レトの身体は更に奥へと転がり込んだ。
一瞬、袖で目元を拭う彼の姿が、目に焼き付いた。
左腕を庇う事も出来ず、何度も全身を打ち付けていく。
生々しい赤い道を残しながら、レトの身体は柱にぶつかってようやく止まった。
「もう忘れてたかもしれないけれど……君は僕に、言ったね。…可哀相だって。………可哀相な人間だね…君も、そして僕も。………どうして、こんなふうにならないといけなかったんだろう…」
薄く開いた視界の真ん中に、ユノが立っている。
その遥か後方に、小さく跳ねる雛鳥のシルエットが見えた。


