幾つもの小さな魔法陣が、起き上がれずにいるレトの周囲を囲んだ。
それはゆっくりと淡い光を放つと、中央にいるレトに向かってじわじわと冷気を走らせた。
目に見える青白い冷気は床に氷を這いつくばらせ、忍び寄る。
だが、レトは微動だにしない。
床に突いた両手の指先が、薄い氷で覆われていくのを肌身に感じながらも…レトは抵抗しなかった。
ただ、彼をじっと見上げていた。
神経を麻痺させる冷たさが両足にまで絡み付いていくのを、ただぼんやりと感じていた。
…真上の天井から、鋭い氷柱が頭を出している。まるでギロチンの様なそれは、狙いを定めるかの様にゆっくりと…真下のレトに向かって下降していた。
空っぽの、殺意だ。
「……君が…レトじゃなかったら………レトが君じゃなかったら……良かったのに…。…何で………何でさ、レト…。どうして君なんだい?…どうして君が、僕の夢を盗るんだい?………どうして…」
「………」
「…どうして…どうして…どうしてさ……………何で……。…だって…僕は……僕は………」
「………」
ああ、そうかもしれない。
彼の言う通り。
僕は、最初からいない方が良かったのだ。
僕は、彼の前に現れなければ良かったのだ。
僕が、僕でない方が良かったのだ。
そうすれば、僕らは。
もしかしたら。
「………君を殺したくなんか、ないのに…」
少しだけ、幸せだったかもしれないのに。
…ユノ、と震える声で彼を呼ぼうと口を開いた直後。
―――ヒュンッ…と、何かが空を切る微かな音色が耳を掠めた。
すぐ傍を、耳元を横切って行ったそれは。
空っぽで、でも何故だか悲しい、殺意で。
目に映る前に飛び込んできたのは、言葉では言い表せないくらいの、激痛だった。
「―――…ぅあ゛ああああああ!?」


