亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


闇の中、そこら中をちらつく粉雪の冷たさで、外に放り出されたのだと理解した。
衝撃の小さい分厚い積雪の上になんとか転がり込み、膝を突いたままの体勢で、マントのフードを背中に勢いよく追いやると…。





「―――…っ………くそっ…!!」

悔しげに奥歯を噛み締めながら、ローアンは片手の拳を力いっぱい地面に叩き付けた。
華奢で、しかし固く握り締められたそれは、滑らかな積雪の表面を無意味に崩すだけに終わった。


独り舌打ちをするローアンの前に、世界を拒絶したかの様に氷のオブジェに閉じこもる城が、相も変わらず堂々と立っていた。

















城の外へと放り出されてしまったローアンを、気にかける暇などある筈も無く。

打って変わって向けられた憎悪と殺気の鋭い矛先に、レトは意識を集中せざる得なかった。
彼の、躊躇いの無い悪意と、叫びに。



「…早く!早く消えてよ!…レト…君のせいなんだから…君が悪いんだから…!…君が間違っているんだから!全部!全部!全部!君が、僕の前に現れなかったら…!」

赤い瞳の輝きは、一向に曇る気配が無い。ユノが一言何か叫ぶ度に、鋭い氷柱の群れが床を、天井を走る。
乱雑する氷の刃は狙いを定めていない故に、反って予測が出来ない。右からと思えば後ろから、上からと思えば真正面から。
咄嗟の判断が命取りだ。


どうする事も出来ずひたすら避け続けていたレトは、巨大な氷柱を避けて着地した後、直ぐさま何処かに退路は無いのかと周囲に視線を走らせる。
歪む空間に、隙間らしいものは見当たらない。


「…また、逃げるのかい?」

そっと投げ掛けられた言葉に、思わずビクリと身体を震わせる。
また強力な魔術か何かを放ってくるのかと思い、身構えながら視線を向けたレトは。



「―――…僕はもう、分からないよ」

「………ユノ?」


黒い感情が渦巻く真っ赤な瞳から、一筋の透明な軌跡が走り落ちたのを見て…レトは、固まった。


驚きのあまり、一瞬で無防備と化してしまったその身は、真正面から体当たりしてきた強烈な鋭いかまいたちを易々と受け入れてしまった。