僕の身体、どうなっているんだろう…と小さく首を傾げるユノから溢れ出る濃い魔力を、ローアンはじっと見詰めた。
白の魔術とは本来、王である人間のみが扱いこなせる魔術だ。王という人間の器に収まるものであり…それ以外の人間が持つべきものではない。
明らかに、彼は己の強すぎる魔力に毒されている。
最早制御出来ないらしいあの力が、勝手に術者の身体を越えて城全体を覆い尽くしているのだ。
あれを…彼を止めない限り…この国に先は無いと言っても過言ではない。
ローアンは無言でレトの肩を引き、悍ましい殺意を孕んだ視線を断ち切る様にゆっくりと前へ出た。
レトが中央を占めていた筈の彼の視界に、突如、見知らぬ女の姿が現れた。第三者の介入に、ユノはぼんやりとした表情で固まる。
瞬き一つしない真っ赤な瞳が、興味深げにローアンを凝視した。
無言で観察を続けるユノと、視線を交える。
「………以前一度だけ、貴殿を目にした事はあったが…こうやって対面するのは初めてだな。………デイファレトのエス王朝…王族の末裔である、ユノマリアン=エス」
重々しい張り詰めた空気の中、凛としたローアンの声が響き渡る。…だが、果たして聞こえているのかいないのか…対するユノは何の反応も見せず、ただ人形の様に突っ立っていたのだが…数秒の間を置いて、ローアンを映した赤いつぶらな瞳が、不意にゆらりと…怪しげな輝きを放った。
「―――……お前は、誰なんだよ………また僕の前に…現れて…」
「……何だと?」
―――また、とはどういう意味なのか。
…何か、おかしい。
怪訝な表情を浮かべながらローアンが一歩前へ進んだ途端……突如、ユノの顔がサッと青ざめたのを二人は見逃さなかった。
泣きそうな、何処か怯えた表情に一変したユノは、頭を抱えてヒステリックな叫び声を上げる。
「……来ないでよ…!あっちに行け!!…僕は悪くない…僕のせいじゃない…欝陶しい!!………また僕を責めるの?…消えて!!」
彼を囲む魔法陣が、淡い光を増殖させていく。
自分に怯えるユノを半ば呆然と見詰めながら、ローアンは呟いた。
「………私を、誰と間違えている…?」


