綺麗だけれど、その目は酷く冷たくて、殺伐とした輝きを放っていて。
でも、全然怖くない。
強い目。とっても、強い目。たくさんの覚悟と、たくさんの犠牲を抱えた目。
あの目は、一体今まで何を見てきたのだろうか。
どうすれば、この人みたいに大きく、強くなれるのだろうか。
……自分にとって、この人は親友を殺すかもしれない憎い敵である筈なのに。
……全く、憎む事が出来ない。嫌いに、なれない。逆に頼ってしまいたくなるくらいで…。
それが何だか、悔しかった。
この人を憎めない自分が、憎い。
「………僕…嫌だ………いくら正しい事でも………嫌なものは、嫌だ………」
「…どちらにせよ、王が生まれなければ全てが終わりだ。………お前が命を絶ったところで…彼も、死ぬ。………皆…死ぬ。…………………それでもお前は、また彼から逃げるのか」
ゆっくりとした言葉の連鎖からは、穏やかながらも芯をえぐる様な強さと抗えない力を感じさせた。
…何かを堪える様に唇を噛み締めながら、レトは視線を外して暗い足元に落とした。
「………でも…僕…」
無意識で握り締めた右手の拳の中で、肌にやんわりと食い込む固い感触が存在を主張する。
手の平に収まった小さな小さな、親友と親友であることを交わした証石が、ひっそりと泣いているみたいだった。
小さくて、薄っぺらくて、力を込めれば、それはいとも容易く砕けてしまいそうなのに……いっそのこと、目に付かないくらい微塵に散って無くなってしまえばいいのに。
忘れるなと言わんばかりに、その存在は大きくて。
大き、過ぎて。
(………殺さ…ないで……)
しっかりと閉じている瞼の隙間から、溢れ出るこの感情の様に涙が滲み出た。
一滴、また一滴と次第に間を縮めてポロポロと闇に落ちていく雫。
気が付けば肩を震わせて馬鹿みたいに嗚咽を漏らしていた。
垂れ下がった頭に、優しい手の温度が下りてきた。撫でる訳でもなく添えられただけのその手が、何だか父の温度に似ていて……懐かしさも相俟って、迷子の子供の様にその手に縋っていた。


