亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


敵か味方か分からない、謎の人物だ。
隣国のフェンネルからの手先であると思い、害が及ばぬ前に始末しておこうとしたが…結局仕留め損ねていた。

その人物が、何故ここに…?


探る様な目つきで警戒心を抱きつつ、剣を構えたまま無言を貫くレト。
そんな敵意を露わにする姿に、金髪の女はゆっくりと歩み寄りながら苦笑を浮かべた。


「そう睨むな。また会ったな…と言いたいところだが、今はそれどころではない。………勝手ながら、話は聞かせてもらったぞ、狩人。………いや、正しくは……デイファレト王…」

そう言って、金髪の女ことローアンは意味深な笑みを浮かべた。
…いつから話を聞かれていたのか。ここは出入口など無い密閉された空間。全く気配が無かったのに。

自分を見据えてくるスカイブルーの瞳にどう反応していいのか分からず、ただただ無言で戸惑うレトだったが……その傍らで傍観していたノアが不意に口を開いた。

「………不審者の気配を捉えるどころか、侵入までも許してしまうなんて…この城は今、私の魔力では本当にどうにもならないみたいですね…。…まぁ、本当に驚いたのは……………その侵入者がとんでもない御方である事ですがね…。……………ようこそ、高貴なるフェンネル王。そして初めまして…」

レトの頭上に浮かぶ半透明のノアは、それはもう深々と丁寧に頭を下げて会釈をした。
さらりと述べたノアの台詞内でたった今明らかになった重大発言に、レトは呆気に取られ、思わず剣を落としそうになった。

「……え…ノア…今、何て…」


…フェンネル王?

この女性が?…王様?…隣の国の…偉い…王様?




話に聞くだけで現実味など一切無かった王様という雲の上の存在が……今、目の前に立っているのだ。

(この人が……王、様…)



見れば見るほど、その存在が大きく、そして気品溢れる空気を醸し出している様に思えた。
そこにいるだけで、空気がガラリと変わる。…息苦しい訳でもないのに、無意識で息を潜めてしまうのは何故だろうか。直視するのが恐れ多く感じてしまうのは、王だからだろうか。