亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

城の最上階にある謁見の間から階下は、入念に計画をしていた反逆側の兵士達の手によってほとんど制圧されていた。
今や迷宮の如き城内の長い廊下は、全て見張りの兵士達の無残な亡骸で埋め尽くされている。部屋に入れば事切れた大臣らの血生臭い異臭が鼻を突く。

城はこの時既に、リイザ率いる反逆側の手によって堕ちているも同然だったのだが…。

「……御命令通り、軍部大臣らを始末する事が出来たのですが………どうやら一人だけ、殺し損ねている奴が…」

「……どいつだ…」

静かに眉をひそめるリイザに、兵士は苦しそうに肩で息をしたまま答えた。

「……側近の、ケインツェルです。………数時間前に奴の部屋に刺客を送っていたのですが…誰も戻って来なかったので…様子を見に…行ったのですが……………奴の姿は、そこには無く…それどころか……」







―――…あったのは、兵士達の死体だった。



「…その、死体も全て……何か…おかしいのです。………全員…自分の剣で、自らの喉を突き刺していて…」

まるで、揃って集団自殺をしたかの様な…そんな奇妙な死に方をしていたのだという。
残されていたのは自害した兵士達の死体のみで、肝心の部屋の主は行方知らず。…何とも不可思議で、不気味な事だ。
兵士が心なしか身震いしている様に見えるのは、気のせいではないのだろう。
…だが、そんな事で狼狽する訳にはいかない。

「………ケインツェルを捜せ。…奴を捕えれば分かる事だ」

一人の側近を殺し損ねているだけで、この計画に支障をきたすとは思えないが…それがあのケインツェルとなると、話は別だ。以前に兄のアイラが奴の事について漏らしていた通り…あの男は、よく分からない。
名前以外、はっきりとした素性も、何もかも。

下された命令に対し、兵士は剣を鞘に納めて即座に踵を返した。そのまま謁見の間を後にしようとしたその矢先、兵士は開け放った扉の前で不意に足を止めた。


そして兵士は何故か、直立不動のまま微動だにしない。不審に思い、ウルガは彼に歩み寄ると、彼の目が何かを捉えて大きく見開いているのが分かった。
つられる様に、その視線の先にある暗い廊下に目を向けた…その直後だった。