亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

先程空いた風穴の大きさが更に増し、凄まじい業火の息吹が闇を照らしながら城外に漏れ出た。
破損した壁の一部と、真っ赤な火の粉の群れが、謁見の間の外へと飛散し、暗い闇の底へと落ちていく。






静かになった謁見の間に、アイラとカイの姿は無い。
杖を構え直し、風穴から身を乗り出して遥か下の闇を見下ろすログを…リイザの低い声が引き戻した。

「………もういい…………放っておけ」

「―――」


この謁見の間のある階から地上まで、かなりの高さがある。
普通に考えて、落ちれば勿論即死だ。…だが、アイラにはあのカイがついている。魔術が封じられていたとしても、同じ魔の者なのだ…侮れない。
……ログには二人がこれで死んだとは思えなかったが、主の命令に素直に従った。

…見上げた先に立つリイザの顔は、何処か浮かない表情に見えた。



「―――…リイザ、様………陛下ばかりでなく、アイラ様までも………何て、事を…」

この展開の早い状況に頭が追い付かず、それまで黙っていることしか出来ないでいたウルガが、わななく唇をようやく動かした。国家に忠誠を誓った兵士として、反逆を許す訳にはいかない。だがしかし、その反逆の首謀者が王族…国家そのものであるならば話はまた違う。
正義感の矢先を何処に向けるべきか、ウルガには分からない。敵と見なせば直ぐに反応する兵士の闘争心も、冷たい眼差しを向けてくるリイザを前に何の役にも立たないでいた。

「……ウルガ=デニメス」

高低差のある交えた視線はそのままに、リイザはゆっくりとこちらに向き直った。ウルガの利き腕は思わず腰の剣の柄に伸びたが、それ以上は動かない。
互いに無言を貫く中、何とも言えない不気味な時間が過ぎていく。…そんな時、何処か遠くから足音が聞こえてきたかと思うと、それはそのまま謁見の間に飛び込んできた。

「―――リイザ様…!」

息を切らしてこの場所に走ってきたのは、一人の兵士だった。室内に転がる無数の遺体を目にしても動じないところからして、恐らくこの兵士は反逆側の者だろう。返り血の付いた抜き身の剣をぶら下げたまま、兵士はウルガを追い越してリイザの元に歩み寄る。

「……何だ…何か問題でもあったのか?」

「…それが……」