カイの驚いている顔が視界の隅に見えたが、そんな事はもう気にしなかった。
溜まっていた分を全て吐き出す様に、アイラは言葉を紡いだ。
「…望んでいないものなど、それが例え無償でも、高貴なものでも…他人から与えられたくなどない。………欲しいものは自分で決める、自分で手に入れる。………縛られるのは、御免だ。………だからリイザ、私は言ったんだ…。……………………私の前を歩いても、構わないと」
弟は、常に自分の数歩後ろを歩いていた。それが、決まりだったからだ。
同じ腹から生まれた兄弟なのに。生まれた順番が違うだけでこの差だ。
笑顔の仮面を貼り付けた弟を見る度に、アイラは何かを感じていた。
それが何なのか、よく分からない。
恐らく、王位を欝陶しいと感じている自分に頭を下げる弟への罪悪感と…縛られていない弟への羨みが、混ざり合ったもの。
後ろを歩く幼い弟に、自分は。
「………次のバリアン王はお前だよ…リイザ。………自由を求める私がその玉座についたところで…神が幻滅されるだけさ」
「………」
ログの杖の先に、真っ赤な炎の球体が膨れ上がっていく。
足元に浮かぶ魔法陣から、それがどれ程強力な魔術なのか一目で理解したが…アイラは全く動じない。
「…兄上には、消えてもらいます。………目障りだ」
「化けの皮が剥がれたなリイザ。………しかし残念ながら…可愛い弟のお願いでもそれはお断りだ。…自由を噛み締めてみたいところだし………欲しい女もいるからね…………………………………さようならだ、リイザ」
…その直後、アイラは腰の剣に手を伸ばした。指先が触れる直前、殺意をいち早く感じ取ったログが魔術を発動させた。
瞬間、真っ赤な閃光が謁見の間に走るのと同時に、炎の巨大な球体がアイラ目掛けて真っ直ぐ突き進んだ。
炎の過ぎた道は黒々と焼け焦げ、鉄の装飾はあっという間に爛れていく。
喰らえば骨も残さぬ業火。
佇んだまま、そしてやはり微笑を浮かべたままのアイラの姿が炎にのまれるかと思われたその瞬間。
―――杖を構えたカイが、間に割り込んだ。


