―――使い古された小さなランプだけが、寝ぼけ眼の少年の視界を、ぼんやりと照らしていた。
狭く仄暗い部屋の隅で目を擦り、ボロボロの毛布を脇に退けて………扉の隙間から漏れる一筋の光に近寄った。
扉一枚隔てた向こう側から、話し声が聞こえた。
ボソボソと聞こえてくる二人の声は、よく知っているもので…。
単なる、好奇心だった。
…無意識で気配を消して、扉に耳を当てて。
―――まだ……悩んでいるのか…?………………お前さんは図体の割に、ちと小心者だの…。
―――…コム爺、その話はよしてくれ。……………あれは……私のせいなんだ…。………私が…。
―――…お前がそんな風では……死んだアシュが可哀相だろう。………ガキも可哀相だ。
―――あの子は…………レトは何も知らないんだ。………母親は病で死んだと…信じている。……だが…。
―――…真実を伝えるのも、隠し通すのも……お前の自由だよ。………あのガキにとっては………何とも言えない話だがな。
―――………。
漏れ出る光は、隙間から覗く円らな紺の瞳を、ただただ照らし続けた。
背中を丸めて震えている男が、一瞬…自分の父だと分からなかった。
この向こう側の明るい世界は、全く違う別世界ではないだろうか。
―――………私は……あの子に何て言えば良いんだ………?………………アシュは……………母親は………。
―――………私のせいで………。
―――……私が…。


