謁見の間に着いたアイラの後に続いて、ウルガも直ぐに合流していた。
玉座の前で起こった惨劇の一部始終を目にしたウルガは、その信じられない夢の様な光景に息をのみ、剣を手に直ぐさま謁見の間に飛び込もうとしたのだが。
…何故かその行く手を、アイラが阻んだのだ。
ウルガの腕を掴んで止めるその手は、自分よりも細く振り払うのは簡単だったのだが…暗がりの中、至近距離にあった彼の妖しい瞳の光が、ウルガを止めた。
「―――駄目だよ君…今は、リイザだけの舞台だ」
彼は…自分の父の…陛下の悲劇を前に、何故。
…何処か楽しげに笑うこの青年に、ウルガは気味の悪さを覚え、動けなかった。
また一歩、リイザに歩み寄るアイラに向かってログが杖を突き付けた。
小柄な彼女の足元にぼんやりと浮かぶ赤い魔法陣は、いつ魔術を発動してもおかしくない。
彼女の…ログの魔力はカイに比べて数段劣ってはいるのだが、まともにくらえば軽傷で済まないのは確かだ。
杖をアイラに突き付けたログの無体に、直ぐさま眉をひそませたカイが二人の間に割って入ろうとしたが…アイラはその忠実な付き人をやんわりと下がらせた。
「…カイ、レディに対してなんて顔をしているんだい。駄目だなお前は。それに………………今この城内で、お前の魔術は使えない事など…分かっているだろう?」
「………」
笑いながらそう言えば、カイは悔しげな表情を浮かべて、上げそうになっていた杖を黙って下ろした。
直後、主従のその様子を見下ろしたままだったリイザが、小さく口を開く。
「………よくお気付きになられましたね…兄上…」
「何だか心外だなぁ…リイザ。なにも私は女性ばかり見ている訳ではないんだよ。………ここに来るまで、城内をあちこち散歩をしていたんだ。………至る所に、強力な封魔の仕掛けが施されていたよ………しかもご丁寧に……お前のログの魔術だけは使える様にされた…複雑なものがね…」
「………兄上は古代文字も読めるのですか。……これは失礼……存じませんでした」


