吹き付ける雪に撫でられ続ていれば、当の昔に身体は感覚というものを何処かに置いてきてしまった様で、寒い寒いとわざわざ呟くのもなんだか馬鹿馬鹿しくて飽きてしまっていた。
それは明らかな身体の不調で危険な状態に違いないのだが、状況が状況である。構ってなどいられない。
「………で、どうするんだよ…お得意の隠密の何か応用を効かせた技とかで越えられないのか…?」
「…どう足掻こうと、所詮私の戦術はただの小手先技。自然の猛威の前では赤子の力同然です」
「この吹雪だもんねー。さすがの鳥も墜落しちゃうって。………しかもなんか…地面、揺れてない?」
巨大な割れ目が覗く谷の縁にまでどうにかこうにかやって来たイブ達三人だったが、轟々と荒々しく流れていく雪崩の大滝を前に成す術も無く仁王立ちしていた。
雪崩は視界に収まり切らない程大きく、そして速い。到底、渡れるものではない。迂回するのが確実なのだが、この谷の端は一体何処にあるのかと気が遠くなる。
物見遊山に来た訳でもないのに、三人揃って壮観な谷の景色を眺めているのだが…こうやって考えている暇など、本当は無い。
…気が付けば、大地が揺れている。
…地震だ。揺れの度に微かに何か魔力の臭いが漂っている。
(………蛇、だな…)
…恐らく、あの襲い掛かってきた大蛇の仕業に違いない。やはり、イブが仕留め損ねていたようだ。
見失ってから何の音沙汰も無いなと気にかかっていたのだが…よもやこんな時に再び地駄団を踏み始めるとは。…この地震、支障を来す程大きくないが…直ぐに厄介なものとなるだろう。
障害となる前に見付けだし、直ぐに始末せねばなるまい。
…震源は城のすぐ近く。今すぐにでも蛇狩りに向かいたいところだが…さて、どうやって向こう側へ行こうか。
「…結局、振り出しに戻るんだな…」
「……あらゆる手を尽くしてみましょう。…いえ、手段など選べません。早急に、迅速な行動が要求されているのですから」
「…って言ってもねぇー…じゃあ、橋でもかけちゃうー?…アッハハ、冗談冗談ー!第一そんな時間無い……って。…………………」


