類い稀なる優れた魔の者であっても、今はこの城を守護する守人。城の結界に力を注いでいるため、本来の力の半分も出せないらしい。故に、今ノアは謁見の間に閉じ込められた状態だという。
「……こうやって幽霊の様に分身の状態でしたら移動出来るのですが…王子の魔力が邪魔して…情けない事に何も出来ません。私ったら本当に役立たずですね…マジだるい……失敬。とにかく、私はいてもいない様なものですのでお話しか出来ないという訳です」
「…ううん……無理してでも来てくれたから……嬉しいよ。…………ドールとサリッサさんは…大丈夫……?」
「ええ。バリアンのお嬢さんの方は重傷でしたが…致命傷ではなかったので。…今は王子のお母上様が看てくれておりますよ」
良かった、と安堵の息を吐くレト。二人の事がずっと気にかかっていたのだが、これで安心した。無事なら、それでいい。
たとえ分身でもこうやって誰かが傍にいてくれるだけで、レトの酷く揺らいでいた心はだいぶ落ち着きを見せていた。…だが対するノアはというと、本の少しだけ緊張の糸を緩めるレトを見下ろす顔から、さっきまで浮かべていた笑みを取り払っていた。
細い指先で自慢の長髪を弄くりながら、ノアは重い口を開く。
「………私がこうやって貴方の元に参ったのは、言うまでもありませんが……勿論貴方をお救いしたいがため…というよりも、この最悪な状況を打破するためです」
「……うん…」
こちらを見下ろすノアの美しい瞳には、何やら妖しい光を宿していた。冷たくて、それでいて残忍で。
慈悲など、欠片さえもない…。
「……時間が、無いのです」
低い声音で呟かれた言葉には、憂いと、そして焦りがちらついていた。
…レトの足元が、小刻みに揺れる。……また、地震だ。徐々に大きくなっている気がする。
……次に訪れた地震は、揺れはさほど強く無かったが…地割れの様な音が鳴り響いていた。
「―――」
低い騒音に重なってノアがまた…短い言葉を放った。それは少し小さくて聞き取りづらかったのだが……レトの耳には、しっかりと届いていた。
確かに届いた、筈のなのに。
何を言われたのか、レトの頭は一瞬…理解出来なかった。
「……こうやって幽霊の様に分身の状態でしたら移動出来るのですが…王子の魔力が邪魔して…情けない事に何も出来ません。私ったら本当に役立たずですね…マジだるい……失敬。とにかく、私はいてもいない様なものですのでお話しか出来ないという訳です」
「…ううん……無理してでも来てくれたから……嬉しいよ。…………ドールとサリッサさんは…大丈夫……?」
「ええ。バリアンのお嬢さんの方は重傷でしたが…致命傷ではなかったので。…今は王子のお母上様が看てくれておりますよ」
良かった、と安堵の息を吐くレト。二人の事がずっと気にかかっていたのだが、これで安心した。無事なら、それでいい。
たとえ分身でもこうやって誰かが傍にいてくれるだけで、レトの酷く揺らいでいた心はだいぶ落ち着きを見せていた。…だが対するノアはというと、本の少しだけ緊張の糸を緩めるレトを見下ろす顔から、さっきまで浮かべていた笑みを取り払っていた。
細い指先で自慢の長髪を弄くりながら、ノアは重い口を開く。
「………私がこうやって貴方の元に参ったのは、言うまでもありませんが……勿論貴方をお救いしたいがため…というよりも、この最悪な状況を打破するためです」
「……うん…」
こちらを見下ろすノアの美しい瞳には、何やら妖しい光を宿していた。冷たくて、それでいて残忍で。
慈悲など、欠片さえもない…。
「……時間が、無いのです」
低い声音で呟かれた言葉には、憂いと、そして焦りがちらついていた。
…レトの足元が、小刻みに揺れる。……また、地震だ。徐々に大きくなっている気がする。
……次に訪れた地震は、揺れはさほど強く無かったが…地割れの様な音が鳴り響いていた。
「―――」
低い騒音に重なってノアがまた…短い言葉を放った。それは少し小さくて聞き取りづらかったのだが……レトの耳には、しっかりと届いていた。
確かに届いた、筈のなのに。
何を言われたのか、レトの頭は一瞬…理解出来なかった。


