こんな時に、何処をほっつき歩いていたのだろうか。
鞠に似た黒く丸っこいカーネリアンの雛鳥アルバスが、レトに向かって一直線に走って来た。
「……アルバス…何処に行ってたの…?」
チチチー…とレトに猪突猛進するアルバスは、身体を起こしながら伸ばすレトの手を振り切り、マントをよじ登ってフードの隙間に飛び込んできた。
寒さを凌ぐ様に頭だけ覗かせ、レトの耳元でよく分からない歌を歌い始める。
独りで城内を徘徊していたのだろうか。…一見、何処にも怪我は無い。
城の外から響き渡っていた獣達の遠吠えや不穏な空気から、何か不吉な事が起こっているのではと危惧していたのだが…このアルバスに関しては特に変わった様子は無い様だ。
雛鳥の相変わらずのマイペース振りに、張り詰めていた緊張が解れていくのが分かる。
高音過ぎて少々耳障りだなと思っていたこの囀りも、今は違う。
(………暖かいなぁ…)
服越しにじんわりと伝わってくる小さな、しかし幾分高い熱が、とても心地よい。冷えた心に染み込んでいくのは、温度だけではない。
「……ねぇアルバス…僕は………どうすればいいと思う?」
歌を口ずさむのに忙しい小さな嘴に触れれば、求めていた答えではなく甘噛みが返ってきた。
こんな小さな雛に問うのもどうかと思うが、それでも何か支えが欲しくて仕方ないのだ。
情けない程に、自分は自分を疑うばかりで動けないでいる。
「……変な事聞いて、ごめんね。…そこ、寒くない?」
マントで包んで抱えてあげようとレトは手を伸ばした。だが、つぶらなアルバスの瞳は不意に真っ暗な廊下を映す。
「チチチッ……チチッ…」
「…どうしたの?…何を見て…」
雛鳥の眼差しを追うようにレトが視線を移動させたその直後…。
…闇が占領する筈のこの空間で、キラリと光る一筋の瞬きがレトの視線と一瞬だけ交わった。
眼球を照らす光に、眩しさを覚えるか否か…というその無音の刹那。
レトの身体は反射的に、その場で真上に跳躍していた。
…直後、目下の大理石の床が、青く凍てついたのが視界の隅に見えた。
鞠に似た黒く丸っこいカーネリアンの雛鳥アルバスが、レトに向かって一直線に走って来た。
「……アルバス…何処に行ってたの…?」
チチチー…とレトに猪突猛進するアルバスは、身体を起こしながら伸ばすレトの手を振り切り、マントをよじ登ってフードの隙間に飛び込んできた。
寒さを凌ぐ様に頭だけ覗かせ、レトの耳元でよく分からない歌を歌い始める。
独りで城内を徘徊していたのだろうか。…一見、何処にも怪我は無い。
城の外から響き渡っていた獣達の遠吠えや不穏な空気から、何か不吉な事が起こっているのではと危惧していたのだが…このアルバスに関しては特に変わった様子は無い様だ。
雛鳥の相変わらずのマイペース振りに、張り詰めていた緊張が解れていくのが分かる。
高音過ぎて少々耳障りだなと思っていたこの囀りも、今は違う。
(………暖かいなぁ…)
服越しにじんわりと伝わってくる小さな、しかし幾分高い熱が、とても心地よい。冷えた心に染み込んでいくのは、温度だけではない。
「……ねぇアルバス…僕は………どうすればいいと思う?」
歌を口ずさむのに忙しい小さな嘴に触れれば、求めていた答えではなく甘噛みが返ってきた。
こんな小さな雛に問うのもどうかと思うが、それでも何か支えが欲しくて仕方ないのだ。
情けない程に、自分は自分を疑うばかりで動けないでいる。
「……変な事聞いて、ごめんね。…そこ、寒くない?」
マントで包んで抱えてあげようとレトは手を伸ばした。だが、つぶらなアルバスの瞳は不意に真っ暗な廊下を映す。
「チチチッ……チチッ…」
「…どうしたの?…何を見て…」
雛鳥の眼差しを追うようにレトが視線を移動させたその直後…。
…闇が占領する筈のこの空間で、キラリと光る一筋の瞬きがレトの視線と一瞬だけ交わった。
眼球を照らす光に、眩しさを覚えるか否か…というその無音の刹那。
レトの身体は反射的に、その場で真上に跳躍していた。
…直後、目下の大理石の床が、青く凍てついたのが視界の隅に見えた。


