亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


小さな頃から鍛えていたおかげで普段息が切れる事なんてあまり無いのに、今は違う。
胸が苦しくて、美味しくもない冷たいだけの空気を何度も吸い込んでは吐き出し、また吸い込んでは吐き出し…。

濃いミルク色の吐息を何度闇夜に投じたか、もう分からない。


………苦しい。とても。

でも、この息苦しさと深い胸の痛みの原因は、きっと疲労だけじゃない。
…ずっと止まらない涙が、その理由の一つを物語っている。

「………はぁ…………はぁ………………は…ぁ…………………」



どのくらい、走っただろうか。
とにかく無限に伸びる廊下をあても無く走り、曲がり角にぶつかれば右へ、次は左へ。
方角なんて分からない。足が動き続ける限り。

だから…今自分が何処にいるのかだなんて、レトには見当もつかなかった。



徐々に動きが鈍くなっていく自分の身体。気が付けば、ほとんど歩いている様な状態だった。
フラフラとよろめく足で数歩前へ進み、伸ばした手が何処かの曲がり角に立つ柱に触れると……レトは柱に体重を預けながら、その場でズルズルと膝を突いた。

冷たい大理石の床に両手を突き、固い柱に頭痛が鳴り止まない頭を押し付ける。
ゆっくりと、大きく肩で息をし、少し落ち着いてから…レトは再び嗚咽を漏らした。

座り込み、床に額をつけて丸くなったまま、乾かない目元をマントの端で拭う。


廊下に虚しく響き渡る声は、なんとも情けないものだと思った。





「………………ふっ………何…っで…………何で……ぼ…僕が……………ひっ………」







間違いだ。

どうして僕が、王様なのだろうか。


僕は、ただの狩人だ。

王様じゃない。

王様は、僕じゃない。



僕は、王様になんて…。









(……神様が…間違ってる………神様………神様…………………僕じゃない……………僕は、違うよ……僕は………)







「………………父さん………僕は…どうすればいいの…?………父さん…」