…とすると、可能な移動手段はただ一つ。
地道に歩いていく、だけだ。
…しかし行く手を阻むのは、止む気配の無い雪崩の大滝。あれを越えていかねば城には近付けない。
しかも、問題はそれだけに止まらない。
「…谷に雪が満ち溢れれば…雪崩はそのまま城下の街に流れ込むでしょう。……そうなれば、全ての街が壊滅することは必然。…まだ谷は満ちておりませんが………あまり猶予は御座いません」
「………最悪だな…」
どうしてこういう時、見計らったかの様に悪条件がもれなく付いてくるのだろうか。
王子様を発見し、バリアン兵士から守った後王政復古を叶える…という極秘任務から………この雪国の平和を守る、というスケールの大きさが増した展開に、リストは苦笑を浮かべた。
城で何があったのかは知らないが…とにかくあのガキ達に拳骨の一つか二つをお見舞いしてやらないと気が済まない。
「………で?…どうやって城に行く?………谷までなら歩いて行けそうだが…そこから先は無理だぞ…」
「………とにかく、行ける所まで行きましょう。…じっとしていても仕方ありません」
―――寒いのに、暑い。
喉と肺が、焼ける様に暑い。
しかし瞼を冷やし、止まらない涙を掻っ攫っていくこの風は、とても冷たくて寒い。
どうして、自分はこんなに必死になって走っているのだろうか。
僕の足は一体、何処に向かって動いているのだろうか。
目の前は、何も無い無限の漆黒。
長い長い廊下の両端。均等な距離を保ってぶら下がる青白く光るランプは、どれも厚い氷の手によって握られている。
火はとっくの昔に熱を失っていたが、その明かりを絶やさぬまま凍り付いていた。
何処を見ても、青白い氷だらけ。
極寒の世界。きっとこのお城は今、大きな氷の塊と化しているに違いない。
僕は、その中にいるのだから。
何処にも、行けないんだ。
何処にも、出口なんか無いんだ。
「………はぁ……はぁ……っ…………はぁ…」


