亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



ザアアァ…と、雪の波が谷底に落ちていく光景は絶景と評してもいいのだが、巻き込まれる側にとっては絶景でも何でもない。

ただの地獄だ。



「―――…うぇっ…ぺっ……ぺっ…!………うわぁ……何これ…」

「皆目見当がつきません。………お二人共、お怪我は御座いませんか?」

「無い……無いが…」







強烈な雪崩は谷に流れ込むに止まらず、吹雪に乗ってそのまま谷の向こう側にまでダイブしてきていた。
当然、そこで乱闘を繰り広げていたイブ達三人にも雪の魔の手は及んだ。

厚い雪崩が夜の暗闇ごと覆い尽くす勢いで、三人を喰らおうと襲い掛かって来た。
だがほとんど反射的にジンが“闇溶け”を発動させ、直ぐさま二人を己の闇に引きずり込んだおかげで、三人は難を逃れることが出来ていた。

今は谷から離れた場所にある丘の上に避難し、白と青が入り込む地獄の絶景を唖然と眺めていた。
全員無傷で逃れていたが、その内の一人リストだけは、「寒い…寒い…」と譫言の様に呟いて身体を必死に摩っていた。


「………これが自然の猛威であるならば致し方ないのですが……魔力によるものだというのが問題です。しかも…白の魔力………」

「…王様が誕生したんじゃないの?もうとっくに夜だし…いい加減王子様が王様になっててもいい筈じゃないのさ!なのに何これ!嫌な予感しかしないんだけどー…」

「………何か、問題があったのでしょう………それが何なのかは分かりませんが。……しかし…些か困りました………城に行くにもこの吹雪では…近付けそうにありません…」

今は闇の濃い夜。“闇溶け”でさっさと手軽に移動したいところなのだが、天候はこの今まで体験したことの無い猛吹雪である。
“闇溶け”は空気の流れに乗って移動するものであるため、風の強さや向きに左右されやすい。
ある程度の強風ならば耐えられる様に鍛えているが…この猛吹雪は少々無理だ。押し流され、城から離れていくのが落ちだろう。