亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「皆がうるっさいかりゃ、目が覚めた。だからルウナは悪くありみゃせんっ。…それよりリルリルはー?しりょーしつにいるの?…アレアレもいにゃいねー…」

つまんにゃーい…と、睡魔を吹き飛ばしたせいで覚醒してしまったルウナは、辺りをキョロキョロと見回す。
困った王子様にわたわたと慌てる師団長は、ちょうどその時階上を歩いていた召使に声をかけたが……直後、ルウナは師団長の足元の隙間を潜り抜け、そのまま階下へと走った。

子猫の如き素早い身のこなしで、ルウナは一階の資料室に真っ直ぐ向かう。



お城は何処もかしこもお昼時と同じで明るい。
召使に見つからない様にしなければ。寝室に連れ戻されてしまう。


ちょっと眠いけれど、頑張って起きていようと思う。









皆が起きて頑張っているのに、自分一人だけが寝られる筈が無い。

母上様がいない今、僕は仮にも、この国の重鎮なのだから。




























それは、あまりにも奇妙な光景…否、まず有り得ない現象だった。

まずそれは嫌という程見飽きた真っ白で冷たい雪で、風に乗って加速する勢いだけはいい雪崩で、空中戦を得意とする吹雪で。

見飽きた筈のそれらが有り得ないというのは。







あの白い巨大な城から、噴火する火山の如き激しさで溢れ出した事だ。

青く冷たい雪の群れが天に向かって高々と上がると…地上に落ちてきた大量のそれらは雪崩となって城壁の外に流れ落ちていく。


広範囲に渡る針山地帯が、およそ十メートルはあるであろう背の高い雪崩に呑まれ、あっという間にただの白い丘へと変貌していく。

城から溢れ出す雪崩は、止まらない。
物凄い速さで大地を覆い尽くす白い津波は、針山地帯を抜けた場所に位置する横一文字の深い谷にまで来ると、谷を埋める勢いでそのまま流れ込んでいった。


ただの深い谷は、あっという間に巨大な滝へと変貌した。
その付近に群がっていた獣達はなす術も無く、逃げる間も与えられず、雪崩の滝に飲み込まれていった。