亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



『………アレスは………御自分のお造りになった世界の均衡を保つことが………アレスの、願い。……それに反する考え、もしくはその未来を築こうとする者を………………望みませぬ…。………現に今………アレスの御手は………末裔の子ではなく………………それとは別の人間…別の器を指差しておられる……』

「…………故に……王族の少年は、王位を喪失した、と………。………神のお告げを頼りに遥々城にやって来た少年にとっては……なんとも、まぁ………………………理不尽な待遇、ですな……」




王朝が変わるなど……どの国にも無い、聞いたことも無い……恐らく歴史的な出来事だ。
古代から約50代まで続いていたデイファレト王が、神の勝手な御意思によって、別の血統の名に書き換えられるなど…。


あってはならないのに。







少年は、何を思うだろうか。

少年は、神に捨てられたのだ。




高貴なる先祖の栄光と共に。







「……先程感知された白の魔力は…その少年によるものだと考えても結構ですかな…?」

『…左様。………かの末裔の子なる者は………己の情に魔力の全てを注いだがために………自我を失い、白の魔術を暴発させている……。………恐らく…“彼”を目にしたのでしょう………』





「………“彼”…?」

守人が不意に漏らした意味深な単語に、アレクセイは怪訝な表情を浮かべた。

…彼、とは何か。

それは一体…と答えを求めて頭上の守人を再度見上げれば、その浮遊する純白の姿は何故かアレクセイに背を向けた。

そしてそのままゆっくりと薄らいでいきながら、壁の向こうへと姿を消していく。





「…守人?……“彼”とは、何ですか…?………少年は何を見たのですか?」


すうっ…と玉座の奥の暗闇に掻き消えていく守人。
身に纏う白い蛍火の輝きが完全に漆黒に染まる直前、低いしわがれた声が含み笑いと共に囁かれた。













『…“彼”は…狂気。……狂気、そのもの。………………古来から…王族の人間にしか見えぬ……………………“彼”は…狂気を誘う者……』