亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


彼等が口にする言葉は真実であり、そして未来でもある。
決して意味の無いものではない、一言一句聞き逃してはならない守人の言葉に、アレクセイは怪訝な表情を浮かべた。

それはどういう意味だと更に問えば、王位の喪失などという有り得ない答えまでもが返ってくる有様だ。
しかし、守人の言葉は真実である。今、あの雪国で一体何が起きているのか。




「………王族の末裔と言われていた少年が、城に向かっていた事は存じています。…日は既に暮れている。それから何の音沙汰も無かった故、無事に辿り着いたとは思っていましたが………その少年が、王位を喪失したと?……………そんな…馬鹿な…」

…全くもって、馬鹿げている。

創造神アレスは、溺愛する愛し子の人間を三大国の王とし、それからずっとその血を引く末裔達を玉座に座らせてきたのだ。
条件は厳しいが、直接血を引いていなくとも王族を途絶えさせないための人間であれば王位継承権を持つことが出来るが……今回の騒動の渦中にいる少年は、間違いなく王族の血を引いている人間である。
王になる資格を持つ、文句なしの人間。他に兄弟はいない一人っ子。少年以外に、デイファレトの王族を繋ぐ人間はいない筈だ。

神の愛し子。神の愛する血筋の子…だというのに。


「………第一、アレスの書にも…あるではないですか………王の血筋を絶やしてはならない、と。これは、禁断ですぞ。………………掟を決められた神、自らが…掟を破るなどと…」

『―――アレスの書は……アレスの言葉。……神の掟は…神が決める事であり…それと同時に………………………神にしか、破れぬもの………』

「………つまり………王位の喪失とは…創造神アレスの………」














愛し子の、鞍替え…とでも言うべきか。








『………かの国は…古代から常に中立の立場に御座いました……数々の戦においても…あの国だけは…。………だがしかし……………デイファレト王は…数世代前から………………極めて危険な…戦争思想を抱いていたと聞いております………』





それが、アレスのお気に召さなかったのかもしれない。